滑ツ境技術研究所
開発センター所長
宮田朋保   

平家蛍の生体について

平家蛍は、田んぼや湖沼に生息していることから「里の蛍」と称されています。

現在では自然界で見ることが難しくなってきました。
成虫の大きさは10mm程度で、15mmぐらいある源氏蛍と比べると一回り小さいものです。
オスとメスは、簡単に見分けることができます。
成虫を裏返して見て、腹部の発光体(白い線)の数が2本で、光が2重線にみえるのがオスです。
メスはオスよりもやや大きく、発光体が1本です。


田圃などで飛び交う蛍はほとんどオスです。
メスは草むらのなかでじっとしている場合が多いのです。

平家蛍の成虫が見られる季節は、源氏蛍よりも長く、関東では6月の終わり頃から9月ぐらいまでです。
夏に飛び交う平家蛍の成虫は、全く何も食べません。
水分だけを補給し、交尾をして産卵を行います。
そして、10日間程度の成虫の生涯を終え死んでしまいます。



孵化したばかりの幼虫は、水面にしばらく浮いてただよ漂い、やがて水の底に沈んでいきます。
産まれたばかりの幼虫は、体長2mm程度で大変な小さいものです。
幼虫が食べるものはサカマキガイやタニシなどの貝類や魚のしがい死骸などです。



平家蛍の幼虫からの生体サイクルを以下に説明いたします。

平家蛍の幼虫は、4回脱皮します。
孵化直後のものを1齢幼虫、
一回脱皮したものは2齢幼虫、
それから3齢、4齢を経て、4回脱皮した幼虫は5齢幼虫(最終齢)と呼ばれます。
脱皮は数十秒で終るのでなかなか見ることができませんが、
脱皮した直後の幼虫は真っ白ですぐにわかります。

1齢幼虫は、あまりにも小さく、よく観察しないとその姿をとらえることが出来ません。
伸びると2mmですが、脅かすと丸まって0.5mmぐらいになります。
まるで糸くずのようです。
稚貝をたくさん食べた1齢幼虫は、数日で脱皮して、2齢幼虫となります。

2齢幼虫の頃から、夜真っ暗な状態で飼育箱の水中を見ていると、発光するところが観察しやすくなります。
人工飼育では「容器をたたくとよく光る」など言われます。
幼虫の発光は本当に小さな光ですが、幻想的で成虫の発光とは違った美しさがあります。

幼虫が2齢3齢と成長するにしたがって、
日中は、幼虫の姿が見つけにくくなります。
石の隙間に潜り込む習性からだと言われています。

4齢幼虫ともなると、自力でタニシを集団で襲い捕食することが可能になります。
室内の暖かいところ(18〜24℃)で飼育していると、
早いものは孵化後3ヶ月程度で最終齢の5齢幼虫になります。
大きさは1.5cmぐらいで、活発に動き回るようになります。
これが上陸の合図です。夜は良く発光します。

自然界での平家蛍は、8月頃に卵を生むとすれば、
9月頃に孵化して、10月11月と幼虫は成長してゆきます。
ところが水温が徐々に下がって、
11月の終わり頃には、幼虫はあまり動かなくなってしまいます。
そして、春の訪れまで休眠状態となるわけです。

さて、5齢幼虫が上陸するのは夜、真っ暗になってからです。
5齢幼虫は、暗闇の中で垂直な炭素繊維マットの壁をよじ登っていきます。
このとき、点滅発光をおこないます。
そして、炭素繊維マットに水際から土の陸へと登り、土の中に潜ります。
地面を張って進む蛍の幼虫は点滅をやめ、連続発光となります。
一度にたくさんの幼虫が上陸すれば、さながら小宇宙の情景をみることができるでしょう。

しかし、幼虫が上陸している時に、懐中電灯などの光を照らすと、
幼虫は上陸を止めて水中に戻る行動をとります。
したがって、市街地などで蛍が見られなくなた一つの要因は、
外灯やネオン看板の照明などの
「明るい環境になったこと」
とされています。

上陸した幼虫は、頭から土の中に潜っていきます。
この際にも発光を続けます。
そして、平家蛍の幼虫は地面から数ミリのところで、
体に土を巻き付けるようにして「土まゆ」を作ります。
そしてさなぎ蛹へと変態するのです。

上陸してから3週間から40日間ほどで、成虫となります。
温度上昇による腐食、線虫・アリ・ナメクジなどによる捕食、なとで
幼虫が土の中で死んでしまう場合もあります。

羽の色が黒づいてくると土まゆから抜け出し、
成虫は、陸を歩くようになります。
ただし、昼間はじっとしていて、
夜になると活発に活動し始めます。
平家蛍の成虫は、強い点滅発光を行うことで、
オスとメスとが分かち合います。

交尾は、オスとメスがお尻をくっつけた形で、数時間かけて行われます。
平家蛍の成虫は10日間から2週間程度しか生きられません。
平家蛍の成虫は水を補給するのみです。

水際の壁か水際近くのコケに卵を産み付けるはずです。
1匹のメスが生む卵の数は、80〜100個程度です。
卵は直径0.5mm程度の白い粒状で、コケの間に押し込むようにして産み付けます。

平家蛍の発光体は卵から持っています。
ですから、卵も光ります。
大変弱い発光ですので、なかなか見ることはできませんが、
集中して産卵した場合などは、真っ暗闇にして挑戦してみてください。

さて、自然の日中の明るさと夜の暗闇のなかで、
蛍の卵は孵化に向かいます。
白かった卵が徐々に灰色・黒みをおびてくれば、もうすぐ孵化の兆候です。
黄色っぽくなったものは孵化しないかもしれません。

水中の砂の上に落ちるとはいずり回り、
餌であるタニシやサカマキガイの稚貝を探しだします。
1匹の平家蛍の幼虫が貝の捕食に成功すると、
次々と他の幼虫も寄ってきて、集団で貝を食べ出します。


このようにして平家蛍の幼虫は、貝類を捕食して冬を越し、
春先になると上陸して成虫となる一年を過ごしますます。

平家蛍の幼虫1匹が成虫になるまでに捕食する貝は以外にも大量です。
サカマキガイで50個、タニシで2個をも食します。

では、次は、平家蛍の餌のご説明です。