[特別版 水理学シリーズ 目次]

【 水 理 学 第36回】(08.12.01)


【ベンチュリー管縦置きの不可解な問題編】

いやー・・・なんの気なしにポロッと出した問題だったのですが、びっくり仰天。

私も最初は、あれ?なんで?なんで?ヘンダーと思っていましたが、計算奮闘すること3時間、
やっとまともな解答にたどり着けました。

「そりゃ、また、難解でしたなぁ・・・どんな問題ですか?」

へぇ。

林泰造先生の本には答えが数だけしか載っておらず、
なんと!吉川秀夫先生の水理学には、同様の問題だけが書いてあって
答えはどこにもないという・・・恐るべき、こんな問題です。


 
【問題】

絞り管を挿入した
垂直な管路に
比重0.8の液体を流している。

図示のように
差動圧力計(差動マノメーター)の
水柱の差が
15.0cmであった。

管内を流れる流量はいくらか。

ただし、一切の摩擦は
無視できるものとする。

「はー・・・シンプルな問題ですね。ベンチュリー管ですね。これは・・・・。

た て お き ですね。タテか・・・・縦?・・・あれ?

あのー・・・ひとつ、質問というか、書き忘れていませんか?」
 

お気づきになられましたね。そうなんです。

縦置きなら、A点とB点との高低差を示してくれても良さそう。

てことですね。

「そうですよ。それがナイ!。この問題は、位置ヘッドは無視しろ!ってことなんですかね。」
 

ぃや・・・・そうではありませんでした・・・・。この問題は、ベルヌィであってベルヌイではなく

何と、実は、圧力の測定の・・・問題の方だったのです。

というか、差動マノメーターの理解力を試す問題だったのです。
もちろん、ベルヌィも使用しますが・・・・。



このことに気づいたのは、この問題が吉川秀夫先生の水理学に載っていた場所が
なんと、「静水圧」の章の演習問題だったからなのです。

しかも、答えは一切無しで。

「ひどぃ」

ぇぇ・・・ひどい目に逢いました。もちろん、私が解けないなんて口が裂けても言えません。

「言ってるじゃんか。だいいち・・・ひどい目に遭ったのは学生じゃないの?」

しー・・・・。こっそりです。こっそり。もちろん内緒です。でも今は解けますからご安心ください。

「あんたがでしょ。」

わはは・・・・・       (ワハハじゃねぇ!)



【解説】

この問題は、A点からB点の方向、下から上への流れです。
でも上からでも下からでも同じ解法です。

管摩擦損失や縮小拡大の管径に関する損失は一切無視しろと言っています。

縮小部Bでは、断面積(流積)がぐっと小さくなり、その分流速が上がります。

流速が大きくなるとその分圧力がぐっと下がるのでAとBでは圧力差が生じます。

もちろん、流量は一定量、ずーっと流れ続けているという定常状態。

そして、絵では管の上部も下部も切れていますが、上下ずーっと続いています、というものです。


 
「はぁ・・・そうすると、

A点では、直管として流れる通常の流速となりますね。」

その位置A点と、絞った場所B点の側面に小穴を開けて、

その圧力差を計測するマノメーターを入れたわけです。
 

「マノメーターですか・・・なんか・・・
比重が0.8の液体が流れてるってのがヘンテコですねぇ。

なんの液体なの?」

さぁ?きっと、軽油かなんかではないかと思います。軽い油か。

「で?」

この差動マノメーターというのは、

A点とB点の静圧の差を読み取る装置です。

側面に流れと垂直に付いていますから。

そして、この管が垂直に置いてあるので、

その静圧には鉛直方向の位置ヘッドのエネルギー分も
含まれていることになります。

「はぁ・・・そ、それでも、
A点とB点間の位置の差は書いてないってわけですか!」
 

そうなんです。ちょっとビックリ・・・

次に、差動マノメーターですが、ここにミソがありました。

「なるほど・・・そこに味噌がつまってたので答えが出なかったんですね。」

(無視)

差動マノメーターには、流れる液体とは混合せず、比重の異なる液体が入っています。

流れる液体の比重をρとし、

差動マノメーター内の液体をρwとしましょう。

この問題では、ρ = 0.8*1000=800kg/m3

そして、ρw = 1.0*1000=1,000kg/m3

と、なりますね。

A点とB点では、A点のほうが圧力が高く、B点のほうが圧力が低いので、

その圧力差に反応して図のように水位差が15cmついたわけです。

「・・・・それって、比重の比で本来の圧力差のρ/ρw=0.8倍てことですかね。」

いえ。そうではありませんでした。

w−ρ)/ρ だったのです。つまり 0.25倍なのです。

「え!なんで?なんでなんでなんで?なんで?」

式で示すと  (林泰造、基礎水理学 p21)

    圧力ヘッド差 + 位置ヘッド = h ×(ρw-ρ)/ρ= h × (ρw/ρ - 1 )

となるのです。

p21では (s-1)h となっていますが、それは測定対象が水なのでその比重が1、
水銀の比重がs=13.6です。

しかし、この問題では測定対象の液体の比重が0.8で、
比重1の水がマノメーターに入っているという、たいそうひねくれた問題なので、
私もたいそう惑わされました。

「どひゃ〜・・・って・・・まだよくわからんなぁ・・・・」

ここには浮力の考えも挿入されているのです。

つまり、比重0.8の液体中に比重1.0の液体が投与されています。

その中の圧力差とρwghの関係となるのです。比重差の分しか圧力差は現れません。

ちなみに15cmの水柱ヘッドは常圧ならば、u2/(2g)=0.15m で、u=1.73m/s になります。
あんまり関係ないけど。



さ・・・というわけで・・・・

【解答編】

A点とB点にベルヌーイの定理を適用すれば

uA2/(2g) + pA/(ρg) + zA =  uB2/(2g) + pB/(ρg) + zB

uB2/(2g) - uA2/(2g)  = pA/(ρg)  - pB/(ρg) + zA - zB     (1)

(1)式は、左辺がAとBと動圧の差、右辺がAとBの静圧を表し、
それがイコールであることを表わしています。

そしてマノメータが示した水柱 h は(1)左辺の静圧の差です。

 h × (ρw/ρ - 1 )  =  pA/(ρg)  - pB/(ρg) +  zA - zB     (2)

となり、(1)=(2)ですから

uB2/(2g) - uA2/(2g) = h × (ρw/ρ - 1 )      (3)

が得られますもはやこれでカタがつきましたね。

A点とB点では直径が1/2倍違うので、AB/AA=4倍

これより、つまりuBはuAの4倍速くなります。

uB = 4 u     (4)

したがって動圧の差は、

uB2/(2g) - uA2/(2g)= 16uA2/(2g) - uA2/(2g) =  15uA2/(2g) 

となり(3)に代入すると

15uA2/(2g) = h × (ρw/ρ - 1 ) (6)

が得られます。あとは、数を突っ込んで計算するだけです。


uA2  = h × (ρw/ρ - 1 ) × 2g / 15

uA2 = 0.15m× (1000/800-1)×2×9.8m/s2 / 15

uA2 = 0.15m×0.25×2×9.8m/s2 / 15

uA2 = 0.049 m2/s2
 

したがって、

uA = 0.221m/s

断面積 AA= 3.14×0.22 /4 = 0.0314m2

求める流量Q は

Q = uA × AA = 0.221×0.314 = 0.00694 m3/s = 6.94L/s

となります。

めでたしめでたし・・・・


2008年度受講の前橋工科大学社会環境工学科・建設工学科、水理学受講生の皆さん
お解りいただけましたでしょうか。

12/8は、せっかくですからこの問題も・・・・・

あ!試験は、1号館の142教室(独立で80名受験できるそうです。)
事務局で掲示するようお願いしましたが、このサイトみたら皆さんお誘い合わせのうえ、
当日は142にお越しください。ちなみに私はまだ1号館の4階に登ったことはないので迷い頭になるでしょう。

【そこで一言】

差動式マノメーターをちゃんと説明すればよかったですなぁ。

理解いただけると幸いです。

いやもー計算したこと・・・したこと・・・


 
 
Editor (oo)Tsuyoshi UMETSU Ph.D.
Associate Professor
Maebashi IInstitute of Technoloy