[特別版 水理学シリーズ 目次]

【 水 理 学 第31回】(08.10.21)


【ベルヌーイの定理:第三話】

〜トリチェリーの定理〜

のぅ・・・・ここに、でっかいタンクがあるじゃろう・・・・

「え?どこ?どこに?」

ここじゃ!有ると思いなせ。

「またですが・・・解りました。目の前に、あります。ものすごくでっかいタンクです。や〜でかい でかい・・・
 

その巨大タンクに、水が満載のようじゃ。

高くそびえたち、広さもでかい。すごい水量じゃの〜

・・・・ぉ!!・・・・・ほほぅ・・・

「ど、どうしました?」

ここに・・・がある・・・・。フム・栓か・・・。 栓ね・・・・・どれどれ・・・・

「あっ!ダメー!やっやめれっ」

ぅぅぅぅ・・・カタイ・・・ぅぅ、むむむむぅ・・・・ボキッ!! うひゃ! 

ジャジャー

「ぅわー大変!!栓がもげて、穴が開いちゃったよー

す、すんごい水が出てきたのー・・・・こりゃ、大変じゃ。

「止まりませんよ、これは。タンクの貯水量はものすごい量だし。」

うーむ・・・困ったのぅ・・・

「それにしても・・・・ものすごい速度で吹き出てきますね・・・」

ぅむぅ・・・見事な噴出という感じじゃのぅ。

一体、どれぐらいの速さで、出てくるんじゃろうなぁ・・・・

「そ、そんなの、解りませんよ。それより速く止めましょう。ヒザまで水が・・・・

このままだと世界が水没します!」
 

と、言うわけで、本日は、この問題を計算しようぞ。

「へ?この問題?水とめないの?出っ放し?」



シャー・・・・・・っと、こんな感じじゃな・・・

「なんか・・・タンクはもっと巨大ですよ。・・・開けた穴は、ずいぶんでかく書きましたね。」

ぅ、うむ。ほんとはもっと巨大なタンクだし、穴はちと大きく書きすぎたが・・・・。

雰囲気は出とる。

なんですか・・・しゃ〜てのは・・・手書きですねこれは・・・」

ぅむ。ちょっと勢いに欠けたが・・・・逼迫した今の状態を描写してみた。

「絵なんか描いてないで、早く水止めましょう。腰まで水が溜まってきましょたよ。」
 

この穴から出る水の速度は、穴から水面までの水深hにだけ、関係するのじゃ。

「へー・・・・タンクの広さは関係ないの?」

うむ。あまり関係無い。

大前提としてじゃ、タンクが巨大すぎて、穴から水が吹き出ているのに、水位が全く変化しない、

そういうことにしようぞ。

「ぅへー、そしたら、一生この水止まりませんね・・・。」

うむ。従って、これは定常流と見ることが、できる。

「はー・・・定常ですか・・時間で変化しない流れ・・・と言うわけですね。」

うむ。 ぉ・・・ヤバイ・・・胸まで水がきおった・・・こっちは完璧に非定常じゃの・・・



そこでじゃ、この問題を解くために、昨日導出したばっかりの、ベルヌーイの式を使うぞょ。

「へ〜・・・ベルヌーイでこの問題が解けるんですか・・・・なんか便利ですね。

それより早く水止めましょう・・・ そろそろが・・・

流線で囲まれた流管をイメージして導いたのがベルヌーイの式じゃ。

このタンクと穴の間にも、ひとつ、流管をイメージしようぞ。

「その前にぃ、この水でおぼれる姿がイメージされちゃいます・・・」

こんな感じじゃ。

水が吹き出ている穴を出口、断面2とし、そっから流管が、広がりながら、

徐々に曲がって、水面まで到達する。水面上の流管の断面1は超巨大としようぞ。

「なんか・・・無理やりってかんじだけど・・・イメージできます。アップアップ

この水面、断面1の持つエネルギーと、穴の位置、断面2の持つエネルギーが等しいわけじゃ。・・ウプッ

「なるほど・・・その2つの断面に、ベルヌーイの式を割り当てるわけですね。くぷぷ・・・

こうなる・・・

u12/(2g) + p1/(ρg) + z1 =  u22/(2g) + p2/(ρg) + z2

「なんか・・・ベルヌイそのまんまですね・・・。あれ? z1-z2 = h じゃない?」

おう!そうじゃ。そのとおり。それで位置水頭は h に変わる。

u12/(2g) + p1/(ρg) + h =  u22/(2g) + p2/(ρg)

求めたいのは・・・穴の流速。 u2 ですね。」

うむ。

u1 って水面の流速ですけど、これはどうやって計算するんですか?」

ぁー・・・これは、ゼロじゃ。タンクが巨大で水位が下がらない、という仮定から、

水面、断面1の流速はゼロとする。 u1= 0 じゃ。

「なるほど・・・それで巨大なタンクなんだ・・・やばいです立ち泳ぎ状態です・・・水とめて

 p1/(ρg) + h =  u22/(2g) + p2/(ρg)

だいぶ、減ったのぅ・・・。

水面の圧力p1ですけど・・・ゲージ圧とかで、ゼロでいいんですよね。」

おー!その通りじゃ。p1=0 (ゲージ圧)じゃ。

 h =  u22/(2g) + p2/(ρg)

「問題は・・・・穴の断面2の圧力p2 ですね。これはどうしたらいいんですか?・・・ヒー

ぁぁ?・・・あーこれもゼロじゃ。ゼロでよい。p2 =0 じゃ。

「えぇー!ダメですよ。ホラ、吹き出ているところに手を置くと、

すごい圧力を感じます。 p2 はゼロじゃないでしょう。」

うんにゃ、ゼロでよい。お前さんが今、手に感じた圧力は総圧といってな、

圧力のほかに流速の力を圧力としても感じたものなんじゃ。

出口は、大気と接触しておる。だから気抜けして大気圧なんじゃ。

したがって p2 = 0 (ゲージ圧) となる。

しかし・・・水が目まで上がってきた・プシュー・・・・ゆっくり説明してる場合ではないのぅ・・・・

こうなる。

 h =  u22/(2g) 

「ありゃりゃ・・・解りました!

u2 = √( 2g h )

です。計算できますね・・・。」

そーじゃ・・・・ウエップ・・・これをトリチェリの定理と言う・・・・

「トリチェリですか・・・・ウエップ・・・し・・・沈みそう・・・」

おー・・・・どうやら今その 水深 h を計ったら、10mだったぞ・・・・

「・・・・と言う事は・・u2 = √( 2×9,8m/s2×10m) =14m/s

すごいですよ!秒速14m近い噴出流れなんですねー」

やー・・・驚いたのー・・・・

便利じゃろう。ベルヌーイは。ワハハ・・・・・

「ゥエップ・・・完全に・・・水が・・水没です・・・・どうすんですか・・・コレ・・・・」

うーむ・・ゥエップ・・・困ったの〜・・・ゥエップ・・・・わしゃ・・・もうだめじゃ・・・・ぶくぶく・・・・

「えーこのままなの?〜ぶくぶく・・・・」



【そこで一言】

ベルヌーイ(Bernoulli)の定理は実際問題に広く使われる式です。

その際には、流れの中に流管をイメージし、

なんらかの状態が解る断面と、知りたい流速や圧力の断面に

ベルヌーイの式を立てます。

1本の式からは未知量は1個しか求める事は出来ません。

従って、ベルヌイ一本で答えを導き出せる場合には、

この問題のように、仮定も必要となります。
 

トリチェリ(Torricelli)の定理は、

水面が動かないことで、入口の流速をゼロとし、

入口と出口が大気と接触していることから双方の圧力をゼロとして、

結局、吹き出る水の流速が u=√(2gh) と計算されます。

(実際には粘性の影響で損失も生じまし出口の抵抗も存在します。この問題では全ての損失を無視しています。)



この  u=√(2gh) を覚える事はナンセンス。

それよりも、入口出口に流管を立て、ベルヌーイでこの式が導出できる能力が大事でーす。


 第32話 

ベルヌーイの定理の応用編につづく・・・

 
Editor (oo)Tsuyoshi UMETSU Ph.D.
Associate Professor
Maebashi IInstitute of Technoloy