[特別版 水理学シリーズ 目次]

【 水 理 学 第30回】(08.10.20)


【ベルヌーイの定理:第二話】

運動エネルギーと位置エネルギーを足したものは一定という物理の理屈から、

質点を捉えられない流体、空気や水の流れのエネルギーでは、

位置エネルギーは、 Ep = ρ g z  [J/m3]

速度エネルギーは、 Ek = ρu2/2 [J/m3]

として、質点ではなく、単位体積あたりとして捕らえる。

さらに、それを W=ρg 単位重量で割れば

位置エネルギーは、位置水頭 Ep/W =  z  [m]

速度エネルギーは、速度水頭 Ek/W =u2/(2g) [m]

として、高さの単位としてエネルギーを捕らえることができる・・・・と言う話でした。

「へぇ。便利なのやら、なんなのやら・・・」



で、流体の運動を表すには、もう一つのエネルギーを加えなければなりませぬ。

「圧力・・・ですね。」

そうです。
 

【流線と流管と非圧縮と非粘性と定常】

エネルギーの保存を考えるために、流れを簡単な理想的な状態として想像しましょう。

その仮定 No.1 → 定常であること。(流れに時間変化は無い)

その仮定 No.2 → 非圧縮です。(密度ρは一定で変化しない)

その仮定 No.3 → 非粘性でないと困る。(粘性があるとエネルギーが減る・・・)

「は・・・・ずいぶんな仮定を導入しましたね〜理想そのものだ。」

そうです。非圧縮非粘性流体は、別名「理想流体」ですから。
 

この3つの仮定の元での流れ場の、流れの跡をたどった線(流跡)は、

特別に、流線 ( stream line )と呼ばれます。

「ぇ?流線て、流れの線じゃん。なんでもかんでも流線でいいんじゃないの?」

いえ、水面に浮いた葉っぱをたどった線や、

ゴミが流れて行く様子をたどった線は、流跡 ( pass line ) といいます。

「誰も言いません。」

いって。これからは。頼む。
 

「ふーん・・・じゃー流線型ってナニ?」

理想流体の元では損失エネルギーは存在しません。

実際の流れ場の中で、流れに対する抵抗を、極力抑えるような形状にすると、

その周りの流れが、理想流体の流れに近づいて行きます。

そうした形状が流線型と呼ばれます。

新幹線の顔とか、ジェット機の機体に翼、原子力潜水艦も・・・まぁまぁ流線型。

野球の球やバスケットボールは流線型じゃない。

F-1のボデーはかなり流線型だけど、フェラーリは流線型といは・・・言わないだろうなぁ・・・

「大陸間弾道ミサイルなんかは流線型でしょうね。」

あー・・・てぽ○んも・・・・きっとそれなりの流線型だろうなぁ。



で、流線の流れ場の特長には、以下の3つがあります。

流線上に載った粒子は、絶対にその起動から離れることは無い。

流線と流線の間の流体粒子は、絶対に流線から出る事は無い。

流線同士は、絶対に、交差しない。

「きまりですね。」

きまりです。

すると・・・流線どうして囲まれた管を考えることができます。これが流管 ( stream tube )です。

「リュウカン?なんか危ない表現ですね。」

流線で囲まれた流管の流れには、絶対に損失エネルギーは無いし、

粒子が逃げないため、量が変わりません。

定常なので、入った量と出た量は、いつも同じ。

そして、流管の、どの断面でも、流量は一定となります。

「ぅぉっ!エネルギーの保存と・・・質量の保存が成り立つんですね。」

そーです。そーです。

その、流管の内部の圧力の行なう仕事を考えると、

圧力のエネルギーは、単位体積あたりとしては p 単位 [ Pa=J/m3 ]

単位重量あたりとしては、圧力水頭 p/(ρg)  単位[ m ]

となるのです。

「いきなり・・・簡単な説明ですね。図は?」

この導出は・・・長いので、一つ単位で認識して下さい。



では、流管内流れを考えましょう。

ここには、エネルギー保存と質量の保存が成り立っています。

流入する流量を Q とすれば、流出する流量も Q です。

図のように、段々太くなっていっても、流管内の、どの断面でも流量は Q です。

それぞれの断面での断面積を  dA とすれば、流量は Q=dA u となりますね。

「なんで、dをつけるの?dA ってナニ?」

微小な流管をイメージして下さい。
その広さなら断面内で速度に差が無いと考えてもらいたい。

「はぁ・・・それで、Q = dA × u    か。」

入口の平均流速は u1 、そして断面積は dA1 流量は Q = dA1u1

出口の平均流速は u2 、そして断面積は dA2 流量は Q = dA2u2

と、いうことは・・・・

Q = dA1u1 = dA2u2

この式が成り立ちます。

「なんか・・・当たり前なんだけど・・・」

まずは!質量保存の法則から導出された式!!

【連続の式】

Q = dA u

です。

「・・・大げさ。あったりまえじゃん。そんなこと。」

いやいや。式は単純なんですが・・・、

ここに、量が保存されるという大きな意味があることを御認識いただきたい。

「へぇへぇ。」



続いて、エネルギーの保存を考えます。

入口1 と出口2 で、それぞれのエネルギーを考えましょう。

速度(運動)エネルギーは、単位重量あたり、u2/(2g)

位置エネルギーは、単位重量あたり、z
 

そして、連続の式より Q = dA1u1 = dA2u2

単位重量を W = ρg として、入り口と出口の流入出量を重量にすれば、

微小時間dt の流入量Vの重量は、 ρg・dA1u1dt = WQdt = W・V

微小時間dt の流出量Vの重量は、 ρg・dA2u2dt = W・Qdt = W・V
 

そうすると、真っ当なエネルギーの単位、ジュール Jで表される量としては、下記の様になります。

入口の運動エネルギーは   W・V×u12/(2g)

出口の運動エネルギーは  W・V×u22/(2g)
 

入口の位置エネルギーは  W・V×z1

出口の位置エネルギーは   W・V×z2
 

次にぃ、圧力です。入口断面の圧力を p1 、出口の圧力を p とすれば、

入口の圧力の仕事は  p1dA1u1dt =  Qdt×p1 = V p1

出口の圧力の仕事は  p2dA2u2dt =  Qdt×p2 = V p2

これも、真っ当なエネルギーの単位、J となっています。そこで・・・

この3つをそれぞれ足し合わせたものが、それぞれの断面の全エネルギーであるということになります。

入り口断面の全エネルギー = 出口断面の全エネルギー

WV ( u12/(2g) + p1/W + z1 )  =  WV ( u22/(2g) + p2/W + z2  )

「なるほど・・・WVが邪魔ですね・・・消しましょう」

W=ρg なので・・・
 

 u12/(2g) + p1/(ρg) + z1 =  u22/(2g) + p2/(ρg) + z2

パンパカパ〜ン でました!!

断面1と断面2では、エネルギーが等しい。

その内訳は、速度のエネルギー圧力のエネルギー位置のエネルギーを足したもの。

全項を単位重量あたりの表記で示せば単位は水頭 m だ。

これが、

[ ベ ル ヌ ー イ の 定理 ]

です。

流れのエネルギーは、速度エネルギーと圧力エネルギーと位置エネルギーを足したものが一定である。

[ ベ ル ヌ ー イ の 式 ]

ρu2/2 + p + ρgz = const. (単位体積あたりのエネルギーJ/m3 表記)

u2/(2g) + p/(ρg)  + z = H      (単位重量当たりのエネルギー m 表記)
 
 

特に、水理学では、エネルギーを水頭で表す単位重量当たりの表記を用います。
 

速度水頭 u2/(2g)

圧力水頭 p/(ρg)

位置水頭 z

そして、それらを全て足し合わせた全エネルギーを示すもの

全 水 頭  H

です。



【そこで一言】

本日の、ベルヌーイの定理は微小な断面の流管をイメージして導入しました。

その流管の太さを 無限に小さく すれば、

一本の流線上で成り立つ理論であることも わかりますね。

今日の話では、まだ断面の平均流速は用いてはいないことに、

ご注目くださいね。


 第31話 

ベルヌーイの定理の応用編につづく・・・

 
Editor (oo)Tsuyoshi UMETSU Ph.D.
Associate Professor
Maebashi IInstitute of Technoloy