今日が最後。静水圧を合力計算では最も面倒な問題。
長方形断面で直壁に作用する水圧の全水圧
長方形断面で斜壁に作用する水圧の全水圧
台形断面で直壁に作用する水圧の全水圧
水面からずっと下にある潜り堰、しかも円面に作用する水圧の全水圧
さらに
曲面に作用する水圧の計算
を経過して、最後は、ラジアルゲート。
では、問題です。ラジアルゲートは、円の中心点からの円弧状の堰です。
この問題では、具体的に水深が1mで、その際の角度が45°であったとします。
ゲートの幅Bは1mとします。
この大きさだと、今まで様々に計算した全水圧の大きさや作用点と比較しやすいでしょう。
奥行き方向は、図と同じ形を維持しているとお考え下さい。
「はー・・・この薄くて見にくい緑色の曲面に作用する全水圧の計算なんですね。」
そうです。昨日の曲面と逆に曲面が水圧を抑えるような感じがするでしょう。
「水圧は、面に垂直に作用するから・・・全ての水圧は円弧の中心方向になりますね。」
そうです。そして、その大きさは水深に比例する p=ρghとなります。
「前回と同じ考え方だと・・・・中空部分の浮力が上向きに作用することになりませんか?」
す〜ばらしぃ。そのとおり。このゲートには浮力が作用することになります。
「そ、そしたら・・・浮いちゃうじゃん!ゲートが勝手に開きますよ。」
いえ。水圧の方向は全て円弧の中心。その合力はやはり円弧の中心に向かいます。
ですから、どんな状態になったとしても、このゲートが浮力で浮く事はないのです。
「ふーん・・・そんなもんかなぁ・・・・・で?このゲートってどんな利点があるの?」
開けやすい。
「は?」
ゲートを操作するエネルギーが小さいのです。
「はぁ・・・・・」
それでは、だーっと計算してみましょう。
そこで、座標と記号をつけて考えて見ましょう。
点Oは、この円弧の中心です。そこから左を正としてx方向としましょう。いままでとは逆です。
また、点0から下向きを正としてz方向とします。
円弧形の曲面堰はBCDで、円の方程式は、 x2 +z2 =r2 です。
この問題では、水深1mで、水没している円弧は角度45°ですから
半径 r = h ×√2 = 1.414m です。
どんな場合でも水圧分布は p = ρgh ですが、その水圧は全て円弧の中心0に向かう方向となります。
「気持ちはなんとなく解ります。でも全圧を求めるにはあまりにも、遠い道のりだ・・・・。」
「簡単じゃ無いんでしょうなぁ・・・」
曲面では、それぞれの位置で、水圧の作用方向が変わるために厄介。
そこで、全水圧Pを、水平方向成分 Px と鉛直方向成分 Pz に分解します。
曲面堰の深さはh。幅はB。
この曲面は、水平方向に写像すると、長方形となります。深さh、幅Bの長方形。その面積はAx。
その図心 hG は水面から 1/2 h のところです。従って、全水圧Pの水平方向成分は、
Px = ρ g hG ×Ax
作用点Zx=hCは 水面から 2/3h のところ、となります。昨日の問題と全く同じですね。
「まぁ・・・普通にそうですね。何回もやったので計算しなくてもわかります。」
一方、全水圧Pの鉛直方向成分Pzは、曲面上の中空部分ABCDに大気が充填しているので、
その分の水量の浮力を受けるということなります。
「こ、こんどは・・・浮力ですか。ゲート全面から水面までの水の重さの分の浮力か・・・・。」
そう、ABCDの部分の体積をVとしましょう。
その浮力は、Pz = -γ V = -ρg V です。ρはもちろん水の密度です。
「え?中空なんだから、空気の密度を使うんじゃないの?」
ちがいます。浮力は、浮いているものも沈んでいるものも、全て水中体積分の「水の重さ」を浮力として受けるのです。
斜線のABCDの体積部分が浮力を受けますが、もしこの部分が水で充填されている際には相殺されるわけです。
鉛直下向きが正なのでPzはマイナスの値となります。
図ではイメージしやすいようにPzは上向きとして書きました。
全水圧 P は、このPxとPzの合力ですから、
P = √( Px2 + Pz2 )
となり、その作用方向は面に対して垂直。 従って、必ず円弧の中心Oを通る方向になります。
残るは、合力Pの作用位置となります。
「 単純に・・・・2/3 h じゃ・・・無いんでしょうね・・・・」
それは、水平方向成分Px の作用位置です。全水圧Pの作用位置はまだ不明。
「昨日同様、鉛直方向の全水圧 Pz の作用位置 Xzを求めることになるのか・・・・。」
(1)水平方向成分Px の大きさと、その作用位置は解っている。
(2)鉛直方向成分 Pz の大きさは計算できるが、作用位置 Xzは解らない。
(3)全圧Pの大きさは計算できる。そして、その作用方向は必ず原点Oを通る。
このことから、まず、Xzを求めます。昨日と同じです。
「やって。 見てる。」
(3)より、全水圧Pの作用方向が原点Oを通るという事は、
全水圧 P がO点回りに作用するモーメントはゼロです。
「それは理解しました。」
そうすると、水平方向成分 Pxの点O周りのモーメントと、
鉛直方向成分Pzの点周りのモーメントを足し合わせると、
ゼロに成らなければいけません。
つまり
Px × 2/3 h + Pz × Xz = 0
です。
ここから
Xz = ( Px × 2/3 h ) / Pz
「へ〜・・・めでたく、Xz が求まりますね。」
そして、ピックり仰天なことに、この作用位置は円弧状にナイことに気付きます。
「え?円弧と接していないの?そしたら・・・変じゃん」
そこで(1)の条件、全圧Pの作用方向は必ず中心Oを通る!を使って、
全圧Pの作用位置を求めます。
と、いうわけで、計算して見て下さい。
「へぇ・・・幅B=1で、水深h=1mで、 全圧の水平方向成分 Pxは、いつもと同じ。
Px = ρg hG/2 × B×h = 1000×9.8×0.5×1 =4.9KN
で、作用位置は水面から 0.667m、作用方向は水平方向。
まぁ何回もやった、暗記したぐらいです。
で・・・次は、このラジアルゲートなるものの上に載っている中空部分の体積か・・・。
体積 =( 扇形部分 - 三角形部分 )×幅
だな。
扇形部分は、半径rの円の面積の45/360=1/8 だ。 πr2×(1/8)
r=1.414mだから・・・ 0.785m2
三角形部分は・・・ h×h/2 = 0.5m2
中空分の体積
V = ( 0.785m2 - 0.5m2 ) × 1m = 0.285m3
なんか・・・少ない感じだけど・・・そんなモンかな。
その水量の重さ(力)の分の浮力だね。 Pzは。
Pz = -γV = -ρg V = -1000×9.8×0.285 = -2.79KN
なるほど・・・浮力としては、たいした大きさじゃないんだな・・・・で?
合力、つまり曲面に作用する全水圧 P は、
P=√( Px2 + Pz2 ) = √( 4.92 + (-2.79)2 ) = 5.64KN = 576kgf
ふむ・・・・全水圧は5.64KN か・・・直壁1mよりもちょっとだけ多い。
まぁ、曲面だから・・・・面が広い分ということで・・・。合ってるかも。」
多分、合ってます。
斜壁の時、壁の長さが伸びた分だけ全水圧が大きくなりました。
今回、曲面としての壁の長さは、2πr/8=1.11mです。水深1mにたいして、面長が1.11m。
水圧は、直壁1mと比べそれほど差がない事は予測できます。
「そういわれれば、そんな気がします。」
では、まず鉛直方向成分の浮力Pzの作用位置を計算しましょう。
「へぇ。それぞれの成分のO点周りのモーメントを合計するとゼロということによって、
Pz Xz + Px ×( 2/3 h) = 0
Xz = ( Px × 2/3 h ) / Pz
これから・・・
Xz = ( 4.9KN ×0.667m ) /2.79KN = 1.171m
・・・・です。
そうすると・・・点0から左方向に1.171mの位置、そして水深0.667mに全圧力Pの作用点がある!と出ました。
その位置は・・・原点Oから、
√(1.17m2+0.667m2)=1.347m
で、半径1.414mより短い。昨日同様、円弧状にはナイ・・・
これを1.414mに伸ばしたところが、ホントの作用位置です。
で、三角形の相似を使うと・・・
全水圧Pの作用位置を原点Oから( Xp , Zp )の位置として、
1.17m : 1.347m = Xp : 1.414m
Xp = 1.17m×1.414m/1.347m = 1.228m
0.667m : 1.347m = Zp : 1.414m
Zp = 0.667m×1.414m/1.347m = 0.700m
はぁ・・・おわった・・・やったぁ!解けました。出来ましたよ!」
図では、こうなりますね。
まとめ
全水圧の水平方向成分はPx=4.9KN で、水面よりZx=0.667mに作用する。
全水圧の鉛直方向成分はPz=-2.79KN で、原点OよりXz=1.17mのところに作用する。
そして、その合力である全水圧P は 5.64KN で、作用位置は、水面より0.7m、原点Oより1.228m。
その方向は、原点0に向かう。
「なんか・・・もう一回やれっていわれても出来ないかも・・・・」
まぁ・・・そうでしょうね。10問ぐらい解けば、半年くらいは頭に残る。
で、それぐらいやると、忘れても、一回おさらいするとすぐに計算できます。
あー面倒だった。絵を描くのが。
しかし、
水圧や全水圧の計算には、正確に書く絵が重要です。
明日は、静水圧のまとめ
そのあとはベルヌーイの定理大会
につづく。
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Associate Professor Maebashi IInstitute of Technoloy |