[特別版 水理学シリーズ 目次]

【 水 理 学 第25回】(08.10.13)


【様々な断面に作用する水圧の計算大会 その3 】

「またまた、またまたぁ、 p = ρg h ですか!」

そうです。今日のは、見事に面倒な話です。

長方形断面で直壁に作用する水圧の全水圧

長方形断面で斜壁に作用する水圧の全水圧

台形断面で直壁に作用する水圧の全水圧

水面からずっと下にある潜り堰、しかも円面に作用する水圧の全水圧

なんて計算をしてきました。

これらは、圧力の作用する面が全部真っ直ぐ平らな面でしたが、本日のは、その圧力の作用する面が曲がってます。

今日は、曲面に作用する水圧の合力の計算です。



【曲面に作用する全水圧の計算

では、問題です。曲面の中でも計算しやすい問題にしましょう。堰が1/4円の形状をしている問題です。
幅方向、奥行き方向は、図と同じ形を維持しているとお考え下さい。

幅Bは1m、水深hも1mとしましょう。


「はー・・・この薄くて見にくい黄色の曲面に作用する全水圧の計算なんですね。」

そうです。今までは平らな面でしたが、今回は曲がっています。

「でも・・・p=ρgh 、圧力が水深に比例して大きくなるのは、同じですよね。」

同じです。それを忘れては絶対にいけません。

「あと・・・圧力は、面に対して垂直に作用する・・・・これも同じですよね。」

同じです。圧力4大基本性質からの例外はありません。
 

「ふ〜む・・・。1/4円弧の形か・・・・。

水面部分は水面と垂直に近くて・・・水圧は、ほぼ水平方向に作用するけど、大きさは小さい。

深くなると段々斜めになって・・・水圧が段々大きくなると共に・・・作用方向も下向きに変わって行く。

で・・・終点は、水深がhでほぼ水平、水圧は鉛直下向きに、なる。」
 

と、いうわけで、かなり複雑ですね。それぞれの位置での水圧は、

p=ρgh の大きさで、方向は面に垂直。

ですから、計算するのは容易いことなのですが、全圧力とその作用位置の計算はとても難しくなります。

「むむむむ・・・・難しい。」


そこで、座標と記号をつけて考えて見ましょう。
 
 


点Oは、この円弧の中心です。そこから右を正としてx方向とします。

また、点0から下向きを正としてz方向とします。

1/4円弧形の曲面堰はABCとなります。
 

円の方程式は、 x2 +z2 =r2 です。

この問題では、r=h ですね。

h =√ ( r2 - x2 )

従って、水圧は、

p = ρgz  =   ρg √( r2- x2 )

となります。

「気持ちはなんとなく解ります。でも全圧を求めるには遠い道のりだ・・・・。」

理論的には、
円弧を水深方向に無数に分割して、それぞれの幅をΔzとして、
その部分の全水圧ΔPは、ΔP= Δp×Δz = ρg Δz2
この、それぞれの分割したΔz管でのΔPを全部足せば全圧力Pになります。

「ぅっ、セキブンですね。」

そうです・・・・数値計算ではこの方法を用いますが、
この方法はやめましょう。水理学では別の解答方法がありますから。



さぁ、水理学的な解答方法です。

「簡単だといいなぁ・・・」

曲面に作用する水圧は、水平方向から鉛直方向に変化していきます。

曲面は、それぞれの位置で、水圧の作用方向が変わるために、厄介なのです。

そこで、全水圧Pを、水平方向成分 Px と鉛直方向成分 Pz に分解して考えましょう。

曲面堰の深さはh。幅はB。

この曲面は、水平方向に写像すると、長方形となります。深さh、幅Bの長方形。

その図心は水面から1/2 h のところです。従って、全水圧Pの水平方向成分は、

Px = ρ g hG ×A

作用点は 水面から 2/3h のところ、となります。

「まぁ・・・普通にそうですね。」

一方、全水圧Pの鉛直方向成分Pzは、曲面上に載っている水量の重さ(力)となります。

「はぁ・・・・ゲート全面から水面までの水の重さですか・・・」

したがって、Pz = γ V  = ρg V

です。

全水圧 P は、このPxとPzの合力ですから、

P=√( Px2 + Pz2 )

となり、その作用方向は面に対して垂直。 従って、必ず円の中心を通る方向になります。

残るは、合力Pの作用位置となります。

「 2/3 h じゃないの?」

それは、水平方向成分Px の作用位置。全水圧Pの作用位置はまだ不明です。

「あぁ、鉛直方向の全水圧 Pz の作用位置 Xzを求めればいいんだ。

・・・・あれ?でもどうやって、計算するんだろう?」
 

(1)水平方向成分Px の大きさと、その作用位置は解っている。

(2)鉛直方向成分 Pz の大きさは計算できるが、作用位置 Xzは解らない。

(3)全圧Pの大きさは計算できる。そして、その作用方向は必ず原点Oを通る。

このことから、まず、Xzを求めます。

「へー・・・なんか、なぞなぞだね。やってみて。」
 

(3)より、全水圧Pの作用方向が原点Oを通るという事は、

全水圧 P がO点回りに作用するモーメントはゼロです。

「はぁ?・・・・あ、そうか・・・確かに、回転力はないですね・・・」
 

そうすると、水平方向成分 Pxの点O周りのモーメントと、

鉛直方向成分Pzの点周りのモーメントを足し合わせると、

ゼロに成らなければいけません。

「そ、そういうモンなの?」 そういうもんですっ!

つまり

Px  ×  2/3 h - Pz × Xz = 0

です。

ここから

Xz = ( Px  ×  2/3 h ) / Pz

「へ〜・・・めでたく、Xz が求まりますね。」

そして、ピックり仰天なことに、この作用位置は円弧状にナイことに気付きます。

「え?円弧と接していないの?そしたら・・・変じゃん」
 

そこで(1)の条件、全圧Pの作用方向は必ず中心Oを通る!を使って、

全圧Pの作用位置を求めます。
 
 

と、いうわけで、計算して見て下さい。

「へぇ・・・幅B=1で、水深h=1mか。

じゃ、まず 全圧の水平方向成分 Px・・・

こっちは、B=1m、h=1mの垂直壁に作用する全圧と同じだ。

Px = ρg hG/2  × B×h  = 1000×9.8×0.5×1 =4.9kN

で、作用位置は水面から 0.667m

まぁ何回もやったし。簡単だった。
 

で・・・次は、この1/4円弧の上に載っている水の力だな・・・。

体積 = 1/4円弧の面積×幅

だから

V =  πr2/4 ×B = 3.14×1 2 /4 × 1 = 0.785m3

その重さ(力)が Pzか。

Pz = γV = ρg V =1000×9.8×0.785 = 7.69kN

PxよりPzの方が大きいんだね・・・・

合力、つまり曲面に作用する全水圧 P は、

P=√( Px2 + Pz2 ) = √( 4.9 2 + 7.69 2) = 9.12kN = 930kgf

ふーむ・・・・全水圧は9.12kN、930kgf か・・・これあってんのか、あってないのか?」

多分、合ってますよ。

斜壁の時、壁の長さが伸びた分だけ全水圧が大きくなりましたよね。

今回、曲面としての壁の長さは、1mの水深に対して、1.57倍です。

しかも、堰の下のほうの水圧が大きい場所が伸びる円弧の形です。

「そういわれれば、そんな気がします。」

では、全圧の作用位置を計算して下さい。

「へぇ。それぞれの成分のO点周りのモーメントを合計するとゼロということによって、
PxZx=PzXz・・・

Xz = ( Px  ×  2/3 h ) / Pz

これから・・・

Xz = ( 4.9kN ×0.667m ) / 7.69kN = 0.425m

・・・・です。

そうすると・・・点0から 横に0.425m、深さ0.667mの位置に全水圧の作用点があるんだけど、

その位置は・・・原点Oから、

√(0.425m2+0.667m2)=0.791m

しかなくって、半径r=1mなので、円弧上にはナイ・・・これを1mに伸ばしたところが、ホントの作用位置です。

で?そうか!三角形の相似でも使うか・・・

全水圧Pの作用位置を原点Oから( Xp ,Yp )の位置として、
 

0.425m : 0.791m = Xp : 1m

Xp = 0.425m×1m/0.791m = 0.537m

0.667m : 0.791m = Zp : 1m

Yp = 0.667m×1m/0.791m = 0.843m

はぁ・・・おわった・・・やったぁ!解けました。出来ましたよ!」

図では、こうなりますね。

まとめ

全水圧の水平方向成分 Px=4.90kN、作用位置水面より Zx= 0.667m

全水圧の鉛直方向成分 Pz=7.69kN、作用位置O点より Xz= 0.425m

全水圧 P=9.12kN、作用位置、O点よりXp=0.537m 水面よりZp=0.843m
 

「ぃや〜・・・長い長い計算でしたね。解けて満足満足・・・

でも、ものすごくはっきりといえることがあります。」

ェ?ナニ?

「絶対、今日のこの水理学は、最後まで誰も読まないよ。」

・・・そうかもしれねーなぁ・・・試験にでも出すか・・・



【そこで一言】

それでも、静水圧の計算は、

とっても、だいじ。

そして、こうした力学の計算に慣れ親しんでみるのも

一興です。


 第26話 

明日は、静水圧の最終話、超難問!!

ラジアルゲートに作用する静水圧の計算

につづく。


 
Editor (oo)Tsuyoshi UMETSU Ph.D.
Associate Professor 
Maebashi IInstitute of Technoloy