「またまた、また、 p = ρg h ですか!」
そうです。今日のは面倒な話です。
「様々な断面ていうと・・・・三角形とか、円とか・・・球とか・・・ですかね。」
そんなところです。基本は、
深くなれば大きくなる水圧が、面に垂直に作用する、
その合力を求めるということなので、積分すればよいだけなのですが・・・・
「セキブン?」
数値計算っぽくなるので、ここでは基本形状の計算例をご紹介。
コンクリートで出来た水路には、底から垂直壁で立ち上がる長方形断面よりも、
末広がりの、台形断面になっていることが多いですね。
「あ〜よくありますね。ナンデだろう?」
河川は、実地形のなかで流れていて、川と陸の境界は、その昔は自然に土盛りされていました。
「へー川が自分で堤防を作っていたの?」
そういう場合もあります。でも、近代においては、
折角作った民家や農地が洪水氾濫で台無しにされるのはヤですから、
堤防を作ったわけですが・・・・基本的には土盛りしたわけです。
土盛りで直壁は、無理です。そうすると、なんとなく、台形断面の形になりますね。
それで、そんな台形に近い河川断面の一部を、3面張りコンクリートにして水をせき止めようとすると、
その堰が台形になることもあるわけです。
で・・・例として、こんなのはどうですかね。
「はぁ・・・でっかい図ですね。画面一杯だ。水深が1mで・・・水面幅は8mか
・・・この断面を、全面でせき止めた場合の水圧ですね。」
そうです。もちろん直壁で。この台形断面に作用する全水圧の大きさと、その作用位置を求めよ!という問題です。
「やってみて。ぱっぱっと。」
エ・・・また・・・私がやるんですか?・・・・
方法はいくつかあるのですが・・・・
一つは、台形を3角形と長方形に分割して、それぞれの面の全水圧を求めてから、全体の合力を出す。
「ふんふん。端の3角形2個と中央の長方形断面に作用する合力を別々に求めるってやつだ。」
もう一つは、この台形断面の断面2次モーメントをズバッと求めて、それを使う。
まぁ、この場合、後者の計算の方が簡単なので、そっちでやります。
「へぇ。やってみて。」
やる前に、予想して下さい。どんな大きさの全水圧で、どこに作用すると思いますか?
「え?そんなの計算してみなきゃわからないですよ。」
そういわず。具体的な問題を挙げたのだから、まず図を見て、予想して下さい。
これはとても重要なことです。
「じゃ・・・まず・・・全水圧の作用位置は・・・横方向では断面の中央になる!間違いない。」
そのとおり。対称ですから、左端から4mの位置に全水圧は作用することは当然です。
深さは?全水圧の作用点の。
「ぅむぅ・・・長方形断面なら・・・水面から2/3のところ0.667mなんだけど・・・・端が三角形で浅い・・・・
ちょこっと、水面に近くなるかな? 水面から0.6m位のところと、テキトーに予測します!」
グッドです。
で?全水圧の大きさは?
「水深1mで幅が1mの時には、4.9kN位だったから・・・今回は幅が8mで深さは1m。
でも、端は三角形・・で浅い・・・6倍ぐらいの・・・30kN位じゃないかなぁ?」
すばらしい。これで、もう終わったようなモンです。
「え?こんなアバウトな計算でいいの?」
だめです。でも、全水圧の大きさも作用位置も、ちゃんとアバウトに予想してから計算する事は
とてもとても重要。計算間違いにすぐ気付けるからです。
【予想】全水圧の大きさP=約30kN。作用位置は端から4m、水面から約0.6mの位置。方向は面に垂直。
「はぃ。そうです。」
じゃ、計算しますね。まず、図心の位置と断面2次モーメントからだな・・・・
一般的な台形断面は下図のようですね。
この台形断面の・・・鉛直方向軸の図心は・・・・上底からの距離をd とすると・・・
d = h/3×(a+2b)/(a+b) = 1m/3 × (8m+4m×2)/(8m4m)=0.444m
なるほど・・・図心は水深1/2=0.5mよりちょっと上になりますね。まぁ上が広いからなぁ・・・。
で?この図心に関する断面2次モーメント I0 は・・・
I0= h3/36 × (a2+4ab+b2)/(a+b) = 1m3/36×(4m2+4×4m×8m+8m2)/(4m+8m) = 0.4815m4
さて・・・これが合ってるかどうかは?解らん。
で?全水圧は・・・・
P=ρg A hG
断面積は・・・ A = 1m×(8m+4m)/2 = 6m2
hG = 0.444m
P = 1000×9.8×6.0×0.444 =26107N = 26.1kN
ぉや?、予想は30kNだったから、なんか、ちょっと小さい気がしますね。
やはり、側壁が逆三角形で水深が深いところの面積が小さいのでこの部分の全水圧は小さいようです。
全水圧の大きさは、26.1kN と計算されました。
さて・・・・その全水圧の作用位置は・・・
hC= hG + I0/( A hG) =
0.444m+ 0.4815m4/(6m2×0.444m) = 0.625m
なるほど作用位置は水面から0.625mと、出ました。予想は・・・0.6m、まぁまぁでしたね。
この台形断面の図心は水面から0.444mで、水深1/2の0.5mよりも浅くなっています。
全水圧は、0.5mよりも深い位置に作用し、長方形壁の全圧作用位置0.667mよりは浅い、 0.625mに作用している・・・
まぁ妥当な計算結果といってよいでしょう。
計算結果が、合っているか間違っているかを判断するのは、計算を実施した人です。
実社会には、解答してくれる先生はいませんから。
この台形断面に作用する全水圧は26.1kNで
その作用位置は断面中央水面より0.625mのところ、です。
「なるほど・・・最初に予想を立てると、計算した値が妥当かどうかの判断ができるわけか。」
そうです。そして、そのことが、
定量的把握をした上での 定性的判断力
を向上させることになります。
「はぁ?なんですか?それ。」
定性的判断力は、エンジニアとして非常に重要な能力です。
力学を知り水理学を学び、計算式を暗記できたとしても、
なんでもかんでも計算してみないと、まるで解りません、
というレベルでは実際には役に立たなかったりします。
それは、判断力が伴っていないレベル。
判断力と洞察力と、そして思考力を持つためには、
定量的な理解を十分に行なった際に、
待ったなしの現場で活用できる定性的な判断力を
養い蓄積していけると
良いですね。
「はぁ・・・解ったような・・・解らないような・・・」
水面に潜っている堰に作用する水圧の計算
につづく。
今回の台形断面の端の方は、上面長さが2mで、深さが1mの逆三角形です。 水圧を積分して求める方法では、
水面をz=0として、水面から鉛直下向きにzを取ると、b=(2-2z)mとなります。微小面積は
b×dz = (2-2z)dz となり、
その微小面積までの水深はz です。 微小面積に作用する水圧は dp = ρgzbdz
= ρg(2z-2z2)dz となります。
これを、0から1mまで全部足し合わせれば(積分すれば)、この逆三角形に作用する全水圧が求まります。
そうすると、3.27kN となり、左右で 6.54kN 。それに中央部の1m×4mの直方体壁に作用する全圧
4×4.9kN=19.6kNを
足せば、全圧は 6.54+19.6=26.14KN。上記の計算結果と一致します。
一方、作用位置ですが、まず同様に逆三角形に加わる圧力のところだけを求めてみます。
微小面積に作用する水圧は、 dp = ρg(2-2z)dzですが、水面点に対するモーメントは、
zdp =ρg(2z2-2z3)dz となります。
これを0から1mまで積分した量と、合力のモーメントが等しいという式を立て、作用位置を求めます。
すると、この逆三角形に作用する全水圧の作用位置は、水面から0.5mのところ、という計算結果が得られます。
それぞれに求めた部分全圧力から、モーメントのつりあいで全圧力の合力を計算しても同様に、
作用位置は水面から0.625mの位置となります。
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Associate Professor Maebashi IInstitute of Technoloy |