[特別版 水理学シリーズ 目次]

【 水 理 学 第21回】(08.10.09)


【静水圧の全水圧計算のための、ウンチクシリーズ】

さぁ、水理学ならではの全水圧の計算をしてみたい気持ちで一杯の今日この頃!

「 p = ρg h ですね。」

そうです。でも違います。

「へ?」

全水圧Pの計算です。

「ぁぁ、水圧の合力の計算ですね。昨日やったじゃん。」
 

ええ。昨日のは、水圧が見事に長方形の面に作用していましたね。

「というか・・・幅1mで水深1mだから正方形じゃないですか。」

そうです。ともかく、長方形でした。(正方形は長方形に含まれます。)
 

実際の水圧が作用する面は、斜めだったり、台形断面だったり、円形断面だったりで、

しかも、水中に潜っているゲートだったり、さらには曲面だったり、します。
 

「ふっ複雑ですね・・・・そりゃ難しい。」

ですから、それを簡単に計算できる式があるのです。
 

「ぃーねぇ・・・・。教えてけろ。けろょ。

これでーす。

全水圧 P = γ A hG = ρg A hG

全水圧の作用位置 hC = hG + I0 / ( A hG )

「ばっバカにすんじゃねー!!コリャなんだ。全く意味不明ですっ。解りません。全部。」

そ、そうですよね・・・これは・・・けっこう説明が難しいのですが・・・・


えっと・・・ですね。

 P = γ A hG = ρg A hG

まず、Pてのは、求めたい面に作用する全水圧です。単位は N 。

「それは、解ります。」

ρg =γは単位重量です。単位はN/m3。Aは断面積です。単位はm2です。

「それも、解ります。」

で・・・ hG てのは、水面から測った断面の図心までの深さです。単位はm。

「ずしーん・・・ときました。・・・・・図心 ですか・・・。図心ね。ずしん・・・。」

そうです。水理学では、電卓でポチポチ計算できるように、この式を使います。
 

三角形でも、台形でも円形でも、どんな形に作用する水圧でも、平らな面であれば、

その図心に作用する水圧が、その面の平均値なのです。

したがって全水圧Pは、

全水圧P= 密度ρ×重力加速度g×水面から図心までの深さhG×面積A

なんです。

「うーむ・・・解らんでも無いが・・・その次の、全水圧の作用位置はすごいネェ・・・」

 hC = hG + I0 / ( A hG )

で・・・hCてのは、求めたい全水圧Pが作用する水面からの深さです。単位はm。

「まぁ、左辺にあるしね。それは解ります。」

hGは説明したから・・・ 次は I0 ですね。

I0 はその断面の、図心軸に関する断面2次モーメントです。

「な ぁ〜ん じゃ?そりゃ。断面?ニジ?もーめんとぉ?

でね、断面2次モーメントの、単位はね・・・あのね、その・・・・ m4 です。

「メートル4乗?・・・最高に、意味不明です。長さの4乗の量なんて聞いたことない。ぷんぷんです。

そうでしょうねぇそうでしょうとも。これをちゃんと理解している人は少ないですから。

そうでしょうとも そうでしょうとも・・・・


ま、とにかく、だまされたと思って、昨日の計算をもう一回やってみましょう。

「幅1mで、高さ1mの長方形垂直壁に作用する

水圧の全水圧は4.9kN、500kgfで、作用位置は水面から0.667mです、てやつですね。」

そうです。それを今日の話題の便利な式で、やってみましょう。

「やって見て。ボクは見てます。眺めてます。」

ょ、よぉぉし!!

まず・・・・断面積は A=1m2

で・・・ hG は、水面から断面の図心までの深さだから、 hG=0.5m

ぉ、これで、全水圧Pは
 P =  ρg A hG
P = 1000kg/m3×9.8m/s2×1m2×0.5m = 4900kg・m/s2 = 4.9kN
 

「げっ。ほんとだ・・・・合ってる。なんかちょろまかしてない?」
 

で、次が作用位置・・・hC だ。まず、断面2次モーメントI0

長方形断面の図心軸に関する断面2次モーメントは、幅Bで高さがhだとBh3/12だから、

Bh3/12= 1m×1m3/12=0.08333 m4
 

「何その量?全くわかんないや・・・。」
 

で、作用位置は・・hC = hG + I0 / ( A hG ) だから・・・

hC= 0.5m + 0.083333m4 / ( 1m2 × 0.5m ) = 0.666m

ほ〜らね〜。同じになったでしょ。
 

ひぃ〜・・・・なんで?ナニこれ?なんでこんな変な計算で同じになるの?」
 

まー・・・深い深ーい、わけがあるんですよ。ちゃんと。ちゃんとね。
 

「ェ?それは説明しないの。」

しない。あんまり興味ないし。林泰三著、基礎水理学のp27に詳しく載ってます。

この1ページだけを、紙とペン持って、1時間かけて勉強すれば、きっと解りますよ。

「えー・・・・なんで説明しないの?」

この式は、使うことに意義がある式で、合力を計算する理屈は昨日ので十分です。

分布荷重の合力の計算だ、というハナシで良いんです。

私の水理学では。


それよりね。

説明したいのは、断面2次モーメントという奇妙な量です。

「それって水理学と関係あるの?」

いやぁ、この静水圧の合力計算にしか出てきませんから、あんまり関係ないですが・・・・

なんとなく、この意味を伝えたい気持ちで一杯です。

「じゃ・・・・どうぞ。解りやすくね。」
 

はたして・・・解りやすくできるかどうか・・・不安ですが・・・

始めましょう。

ある断面の図心軸に関する断面2次モーメントとは!!

その意味は!そして何に使われる数なのか!!

はじまりはじまり〜ぱちぱちぃ〜  

シーン・・・・

じゃ、例として、超簡単な図形で、長方形にしましょう。幅がBで、高さがhの図形です。

「それはいいけど・・・・、その図形を横に倒して、幅hで 高さがB でも同じなんでしょ?」

いえ、違います。
 


断面2次モーメントは、どの軸に対してなのか?で全然値が変わります。

意味も変わります。

だから、この場合、幅がB (x方向) で、 高さがh (z方向) なんです。

「はぁ・・・続けて。」
 

で・・・この長方形の図形の図心は、幅Bの1/2で、高さhの1/2のところですね。

「まぁ、間違いなく、常識的にそうですが・・・それが何か?」
 

今回問題にする断面2次モーメントは、

hの1/2の位置、z方向での図心軸に関する断面2次モーメントであることをご理解下さい。

「はぁ。理解したことに、します。」
 

でね、図心の定義ってのは、図心だ!と決めた軸を基準として、

微小面の面積×微小面から図心までの距離、を全部足したものがゼロである。

というものなんです。これを ”断面1次モーメントがゼロである” といいます。

「寝る・・・。寝ますボク。」

起きて起きて。

面×距離の総和 これを行なったものが 断面一次モーメントなのです。

「はぁ・・・普通モーメントは、力×距離ですよね。それを面×距離にしたってことですか。」

そうです。

断面一次モーメントがゼロとならない軸は、その方向での図心の位置ではないのです。

ですから一般的に、断面一次モーメントは図心の定義に用いられます。
 

「なんとなく、解りました。三角形断面を想像すると、なんとなくわかります。」

そうですね。三角形では、図心位置は、上から2/3の所。

そうすると、図心軸は、その三角形の面積を2分する線であると共に、

その軸を基準とする断面×距離の総和がゼロである場所、のイメージが湧きますね。

「なんとなく、なんとなく・・・です。」
 

じゃ、図心なんですが・・・・こんなイメージではどうですか?

その図形が、均一な同じ材料で同じ厚さの、薄い丈夫な板だとして、

指一本で、支える点
 

「はぁ・・・それって・・・重心ですね。重心じゃないですか。

重心と図心て同じなの?」
 

条件として、均一で同じ材料で出来ている、面での質量が均一である、とすれば、

図心と重心は、一致します。

それって、力のモーメントの総和がゼロの点ですから。
 

「ぅ〜ん・・・イメージは出来ました。断面一次モーメントがゼロは図心軸。」
 

さぁ、そして、期待の新人!

断面2次モーメントの登場です。

しかも、使用するのはいつの場合も、その図形の、

図心軸に関する断面2次モーメントです。

「はぁ・・・図心軸を基準とする、ってところが重要なんですね。」

そうです。

断面一次モーメントは、

微小面の面積×微小面から図心までの距離、を全部足したものがゼロである、でした。

「へぇ。軸より下方向は、マイナスの値になるので、図心では相殺されてゼロになる。」

そうです。

断面2次モーメントは、

 微小面の面積×微小面から図心までの距離  ×微小面から図心までの距離

を全部足したものでーす。

「はぃ、オワリ。さカエロ。」

ぉぃおぃ・・・・まだ、まだですよ。
 

「それ・・・・どんな意味があるの?・・・・確かに、面積×距離の2乗で、長さの4乗だけど。」
 

そーですねー。まず、この量は、絶対に正の値を取ります。

「正?・・・あぁ、軸からの距離を2乗しているから、軸より下も正だ。確かに。」

で・・・その大きさ、断面2次モーメントの大きさは、一つの数字であるにもかかわらず、

断面の持つ形を示すことになります。

「数字ひとつじゃ・・・・形なんてわかりませんよ。」
 

図心を中心とする距離2×面積

これは、図心からどんな位置にどんな形のものがあるのかを示します。
 

じゃ・・その意味を理解していただくために、

幅Bで、高さhのz方向の図軸に関する断面2次モーメントを計算しましょう。

「へぇ。やって。」

Bh3/12になります。

「いきなりですか。」

では、具体的に・・・・幅1cmで、高さ10cmの断面とします。

「縦長ですね。横1に対して縦10だ。」

断面2次モーメントは、

I0 = 1cm×(10cm)3/12=83.33cm4= 1000 / 12 cm4

と計算されます。

「それで?」

その断面を横にして・・・幅10cmで高さ1cmの断面と比較しましょう。

「こんどは、思いっきり横長ですね。」

そうです。その断面2次モーメントは、

I0=10cm×1cm3 /12 = 0.8333 cm4 = 10 / 12 cm4

です。

「なんとまぁ・・・同じ形なのに、縦置きと横置きでは、1/100ですか!なにこれ?」
 

そう、これが、この断面の曲げに対する評価をしています。

断面2次モーメントが大きい断面は、それだけ曲げに対して強いのです。

「はっ!も、もしや・・・応用力学ですか!」

そうです。
 

長方形断面の鉄の棒をご想像下さい。

断面が、幅1cm高さ10cmの鉄の棒、長さ2mを、梁にして上から思いっきり押す。

「さすがに・・・曲がらないでしょう。厚みが10cmもあれば・・・」

じゃ

断面が、幅10cm高さ1cmの鉄の棒、長さ2mを、梁にして上から思いっきり押す。

「お?これは・・・曲がるかも。厚みが1cmだし・・・スパンは2mもあるし・・・」

ね。

そうでしょう。

断面2次モーメントは、こんな風に、その断面が曲げに対してどの程度強いのかを表す数なのです。
 

「じゃ・・・10cm×1cmの断面だと、

縦置きと横置きでは断面2次モーメントが100倍違ったけど、

曲げに対する強さが、100倍、差があるってことなの?」
 

そうです。その通りです。

全く同じ材料、同じスパンであれば、同じ力を加えると、変形量は100倍違います。

弾性変形の範囲であれば。

だから、横置きにして、力を加えて1cm変形させることができても、

縦置きすると、その1/100の 0.1mm しか変形しません。
 

「へーぇ・・・・・そうなんだ・・・・断面2次モーメントね・・・・」

しみじみですね。

「しみじみです。」



【そこで一言】

全水圧の計算は、

断面2次モーメントを使った式を使うのが一般的。

これは、何度も計算して見て、慣れる必要があります。

でも本当は、分布した水圧の合力の計算。

桁合わせは慎重に。

断面2次モーメントはめちゃくちゃな数になるので、

計算値が妥当かどうかは、一見不明。

計算は慎重に。

(時間が無いので図はまた今度)


 第22話 

垂直壁と斜壁。同じ水深で受ける圧力は?なにが同じでナニが違うの?

につづく。


 
Editor (oo)Tsuyoshi UMETSU Ph.D.
Associate Professor 
Maebashi IInstitute of Technoloy