[特別版 水理学シリーズ 目次]

【 水 理 学 第16回】(08.10.04)


今日は開水路流れの、目を見張る 恐るべき ふつー の現象

跳 水

についてです。

「ちょーすい?はねる?ミズ・・・水が跳ねているサマを跳水と呼ぶんですかね?」
 

いえ、そうではありません。

勾配の急な水路の流れが、 フルード数 Fr > 1 、射流になっているとします。

「はぃ。イメージしましたぁ。しゃーって感じ。」
 

で、その下流に配が緩やかな水路があります。そこはゆっくり流れ、Fr < 1 の常流です。

「ほぅ・・・・急勾配水路から緩い勾配の水路に変わるわけですね。」

そうです。そのとき、急勾配から緩い勾配に変わるどこかで、生じる現象、それが跳水です。


(落書きみたいな絵ですな)

「あーこれかぁ・・・見たことある気がする。あるょ。これ、よくありますよね。

ふーん・・・そうか・・・これにはフルード数が・・・・そして射流と常流が関係あるんだね。

でも・・・・?? なんで跳水現象って生じるんだろう?
 

それを考えるのは とてもとても良いことです。

流れの慣性力と、粘性力と、波速と流速をイメージして見て下さい。

「んん・・・・・ん・・・・・今はいいです。」

流しでも、この跳水現象は簡単に見られます。

ほれ、左側がしゃーっと流れる射流、右が常流ながれで、

そのはざ間は、渦巻きながら段差のある水面となってますね。


さぁ、それでは、開水路の具体的な計算をして見ましょう。

同じ流量 Q を流します。水路の形は矩形、長方形断面。
 

「ぉ、もしや・・・マニングの平均流速公式ですか!」

そうです。粗度も変わらない、同じ値として、勾配を変化させましょう。
 

「はぁ・・・緩い勾配から・・・・急な勾配に変化させていくわけですね。同じ流量で。
 

そうです。だんだんと勾配を急にすると、水路の流れは常識的には?どうなりますか?

「段々、流れが速くなる。」
 

ほかには?

「え?ほか?・・・・・。あ・・・・水深が・・・水深が浅くなる。」
 

そうです。そして、フルード数は大きくなっていきますね。
 

この関係を調べるためにマニングの平均流速公式を使うのですが、

今回の計算だけは、

矩形断面の幅Bを無限大にして考えましょう。

「幅が無限?∞?なんで?」

径 R深 を 水深 h として計算できるようにするためです。
 

幅B、水深hの径深 R = A/S = Bh / ( B+2h )でした。

もし、Bが無限に大きいと、 R は h と等しくなりましたね。

「そんな、ことも、あったなぁ・・・・」
 

さぁ、式をそろえて見ましょう。

【水路幅が無限大と仮定したマニングの平均流速公式】

U = n-1  h 2/3  I1/2

【単位幅当たりの流量】

q = h × U

【波速】

c = √(gh)

【フルード数】

Fr= U / c


「じゃ、・・・計算しますよ!!って・・・最初は?何をすればいいんだろう?」
 

粗度係数 n は この先ずっと、 n=0.02m-1/3で統一するとして・・・
 

じゃ、まず勾配Tが 1/5,000 での流れを想定しましょう。水深はどれぐらいをイメージしますか?
 

「え?じゃ、10cm。浅くいくかな。」

ちょっと、浅すぎですね・・・・。そのあと段々勾配を急にして行くので・・・水深がどんどん浅くなる。
 

「そ、そっか・・・・。じゃ・・・ h= 1m にします。

n=0.02-1/3s で、h=1.0m、勾配 I = 1/5000=0.0002 の平均流速は・・・
 

U = 0.02-1× 1.0 2/3 ×√ 0.0002 =0.707 m/s  でました。」
 

じゃ、単位幅当たりの流量 q を計算して。
 

「なにそれ?・・・あぁ・・・水路幅が無限だから・・・流量を単位幅当たりするのか。」
 

そうです。単位幅当たりの流量 q の単位は、m3/s /m = m2/s となります。
 

「はい。 q = h × U  = 1m×0.707m/s = 0.707m2/s です。」
 

波速は?フルード数は?
 

「 波速は・・・c = √(gh) =3.13m/s、 フルード数は Fr=0.707/3.13 = 0.23 となりましたぁ。」
 

いーですね。完全なる常流です。
 

「でも・・・勾配1/5,000てのは・・・5kmで1m低いだけ。ほとんど平らな高低差なのに、

水深が1mもあると、流速が70cm/sなんていう大きさになるんですね。」
 

なにしろ、幅が無限大なので、側壁摩擦がない分だけ流速が大きめになってしまいますが、

それでも、1/5,000勾配で水は流れるということです。
 

「で?これで・・・勾配を変えて行くんだ。・・・よし、次は、I = 1/4,000でやるぞ!
 

えっと・・・ I = 0.00025にして・・・・

U = 0.02-1× 1.0 2/3 ×√ 0.00025 =0.791 m/s だ。でましたぁ!!

簡単簡単。で、・・・単位幅当たりの流量q は

q = 0.791m2/s です。 うしし。 そして・・・・ 」

ちょっと、ちょっと、それ、違いますよ。間違いです。
 

「へ?だって、だんだん、勾配を急にして行くんでしょう?」
 

そうです。流量を一定にして勾配を急にして行くのです。
 

その計算だと、水深が一定で、流量が段々大きくなっちゃいますよ。
 

「ぁれ?・・・・ほんとだ・・・・そっか、流量一定になっていない。」
 

そう、勾配を変化させれば、本来、流速も水深も変化するはずですよね。
 

「そ、そうだよなぁ。勾配を急にすれば、流速は大きくなって、水深は浅くなっていくんだ。

ど、どうやって流量一定での計算をするの?」
 

q = hU を一定にして U=n-1h2/3I1/2 で流速を計算する。

nは定数、q は一定、I は代入。

とすれば? U と h が未知量となりますね。で、式が2本ある。

「おぅ! わかた。 q=hU から、 U=q/h として、平均流速式に代入するんだ。」

そーです。そうすると?

「 q/h  = n-1 h2/3 I1/2  になるので、両辺に hをかけて

q= n-1 h5/3 I1/2  となって・・・・

h5/3 = qn/I1/2  だから、

h = (  qn / I1/2 )3/5

でーす。 って・・・・あれ?ボクどうしたの?急にこんな計算すらすらと・・・
 

よくできました。これで、流量と勾配と粗度係数を代入すると、水深が計算できます。

その水深h から、 U=q/h で平均流速が計算されます。


粗度係数0.02-1/3sでの

単位幅当たりの流量 q = 0.707m2/s 一定とする幅無限仮定の開水路ながれ


 
勾配 I  水深 h(m)  波速c(m/s) 平均流速U(m/s)  フルード数Fr 
1/5000
1.0
3.13
0.707
0.23
1/4000
       

「あれ?1/4000のは?・・・って、それは計算しろってことか・・・・

で?どゆいうふうに勾配を変えて行くの?」

そうですね・・・・1/4000、1/2000、1/1000、1/500、1/400、1/200、1/100、1/80、1/60、1/50、1/40

ぐらいで、いかがでしょう?

「ひー・・・・そ、そんなに??」

さぁ!はじめ〜

「ひゃ・・・・ぽちぽち・・・・ぽち、ぽち・・・・

q=0.707m2/sとn=0.02と勾配Iを入れて・・・h = ( qn/I1/2)3/5  で hを計算して・・・

√(9.8×h)で波速cを計算して・・・U=q/hで平均流速を計算して・・・で U/cでフルード数・・・・」



単位幅当たりの流量 q = 0.707m2/s 一定とする幅無限仮定の開水路ながれ
(n=0.02-1/3s )
勾配 I 水深 h(m) 波速c(m/s) 平均流速U(m/s)  フルード数Fr=U/c
1/5000
1.000
3.13
0.707
0.23
1/4000
0.935
3.02
0.756
0.25
1/2000
0.760
2.73
0.930
0.34
1/1000
0.617
2.46
1.146
0.57
1/500
0.501
2.22
1.411
0.64
1/400
0.467
2.14
1.514
0.71
1/200
0.381
1.93
1.856
0.96
1/100
0.309
1.74
2.288
1.31
1/80
0.289
1.68
2.446
1.46
1/60
0.265
1.61
2.668
1.66
1/50
0.251
1.57
2.817
1.78
1/40
0.235
1.52
3.009
1.98

「ひぃ〜・・・・終わった・・・大変でした。合ってるのかなぁ?でも・・・・なるほどねぇ・・・。」
 

おーいい具合に計算できたようですね。じゃ、批評して見て下さい。
 

「自分がやった計算ですが・・・ぅおっほーぅおん!じゃ、

この表からわかることは・・・・いっぱい、あります。

同じ流量を流した開水路で、勾配を段々急にしていく流れを表していますが、

水深は、だんだん浅くなっていき、1/5000と比べると100倍急になった1/50で1/4の水深になってます。

で・・・

水深の1/2乗に比例する波速も、段々遅くなっていきますが・・・1/5000と1/50では・・・あ、ちょうど半分ぐらいですね。

勾配が100倍大きくなっても、波速の変化は1/2にしかならないってことか・・・

で・・・平均流速は、だんだん速くなります。1/5000と1/50では・・・4倍速くなってます。

そして・・・フルード数ですが、これも勾配が大きくなると徐々に大きくなっていきます。

1/5000と1/50の比較は・・・7.74倍・・・だなぁ・・・あ!!

フルード数・・・・ Fr<1 で常流、 Fr>1 で射流でしたね。だったら、

勾配が1/200までは常流、それ以上きつい勾配では射流になりまーす。 おわりぃ!」
 

ぱちぱちぱちぱち〜すばらしぃ〜

すごい!よくできましたぁ。

「はー・・・じゃ、今日は終わりってことで・・・はぁはぁ・・・」

ぁぃゃ・・・まだです。
 

折角だから、 Fr=1 の流れを計算しましょう。

「ェー!まだやるのぉ?も〜いーょぅ」

でも・・・それやらないと、明日も最初から計算してもらうことになりますよ。

「やりましょう! はぃ。Fr=1の流れですね。どうすんの?」

Fr=U/c=1 だから、

U=c=√(gh)

U2 =gh

h= U2/g

ですね。

「はぁ、まぁそうですね・・・・。おぅ、で、 q =hU だから、それに代入する。」

q = h U = U2/g ×U  = U3 /g

したがって

U3 = q g

よって

U = ( q g )1/3
 

「はぁ・・・なんか今日は、3/5乗やら1/3乗やらのべき乗の計算が多いなぁ・・・」

じゃ、計算して見て。

「 Fr=1となる、平均流速は U =1.906m/s です。その時の水深は h=0.371m です。」

Fr=1 になってますか?

「えっと・・・ √(gh) =1.907m/s ・・・あ、OKです。桁オチしてちょこっと違いますが、合ってます。」

すーぅばらしい。じゃ、その時の勾配は?

「ェ〜・・・こんどは、勾配?Fr=1になるときのぉ?ひー・・・・

U= n-1 h2/3 I1/2 から・・・・

I1/2 = Un /h2/3 で・・・・

I = ( Un / h2/3)2 = ( 1.906×0.02 ÷ 0.3712/3 )2 = 0.0055

つまり勾配 I は0.0055で・・・約183分の1です。約 1/183 です。

おー!さっきの表で1/200のとき Fr=0.96だったから・・・

それよりちょっと急なとき、Fr=1だし!

合ってるね!コレ、合ってますよ。あってるます。合ってなんぼだよ。」
 

ぃや〜お見事でした。

「もーぃぃ・・・水理学って計算ばっかりなんだね。」

ぇぇ。計算ばっかり ですよ。

「こんなのエクセルとかで、ぱっぱとやればいいのに。」

私はもちろんそうします。
 

でも・・・・それはこれらの意味内容そして実際を知っているからです。

初めての人は、ぅんぅん言いながらでも、こつこつ電卓で計算するほうがいいんです。



【そこでまとめ】

開水路の流れ

同じ流量でも、勾配が変わると流速も水深も変わる。

流れの状態は フルード数 で 評価

フルード数 Fr<1  常流ordinary flow

フルード数 Fr > 射流 jet flow

そして、Fr=1 となる流れは

Fr=1 限界流 critical flow

と呼ばれます。

Fr=1の流れ、限界流には、とってもとっても深い意味が込められているんです。

その話は、ずっと後に。


 第17話 

こんどこそ 跳ねる水

につづく。


 
Editor (oo)Tsuyoshi UMETSU Ph.D.
Associate Professor 
Maebashi IInstitute of Technoloy