跳 水
についてです。
「ちょーすい?はねる?ミズ・・・水が跳ねているサマを跳水と呼ぶんですかね?」
いえ、そうではありません。
勾配の急な水路の流れが、 フルード数 Fr > 1 、射流になっているとします。
「はぃ。イメージしましたぁ。しゃーって感じ。」
で、その下流に配が緩やかな水路があります。そこはゆっくり流れ、Fr < 1 の常流です。
「ほぅ・・・・急勾配水路から緩い勾配の水路に変わるわけですね。」
そうです。そのとき、急勾配から緩い勾配に変わるどこかで、生じる現象、それが跳水です。
(落書きみたいな絵ですな)
「あーこれかぁ・・・見たことある気がする。あるょ。これ、よくありますよね。
ふーん・・・そうか・・・これにはフルード数が・・・・そして射流と常流が関係あるんだね。
でも・・・・?? なんで跳水現象って生じるんだろう?」
それを考えるのは とてもとても良いことです。
流れの慣性力と、粘性力と、波速と流速をイメージして見て下さい。
「んん・・・・・ん・・・・・今はいいです。」
流しでも、この跳水現象は簡単に見られます。
ほれ、左側がしゃーっと流れる射流、右が常流ながれで、
そのはざ間は、渦巻きながら段差のある水面となってますね。
さぁ、それでは、開水路の具体的な計算をして見ましょう。
同じ流量 Q を流します。水路の形は矩形、長方形断面。
「ぉ、もしや・・・マニングの平均流速公式ですか!」
そうです。粗度も変わらない、同じ値として、勾配を変化させましょう。
「はぁ・・・緩い勾配から・・・・急な勾配に変化させていくわけですね。同じ流量で。」
そうです。だんだんと勾配を急にすると、水路の流れは常識的には?どうなりますか?
「段々、流れが速くなる。」
ほかには?
「え?ほか?・・・・・。あ・・・・水深が・・・水深が浅くなる。」
そうです。そして、フルード数は大きくなっていきますね。
この関係を調べるためにマニングの平均流速公式を使うのですが、
今回の計算だけは、
矩形断面の幅Bを無限大にして考えましょう。
「幅が無限?∞?なんで?」
径 R深 を 水深 h として計算できるようにするためです。
幅B、水深hの径深 R = A/S = Bh / ( B+2h )でした。
もし、Bが無限に大きいと、 R は h と等しくなりましたね。
「そんな、ことも、あったなぁ・・・・」
さぁ、式をそろえて見ましょう。
【水路幅が無限大と仮定したマニングの平均流速公式】
U = n-1 h 2/3 I1/2
【単位幅当たりの流量】
q = h × U
【波速】
c = √(gh)
【フルード数】
Fr= U / c
「じゃ、・・・計算しますよ!!って・・・最初は?何をすればいいんだろう?」
粗度係数 n は この先ずっと、 n=0.02m-1/3s で統一するとして・・・
じゃ、まず勾配Tが 1/5,000 での流れを想定しましょう。水深はどれぐらいをイメージしますか?
「え?じゃ、10cm。浅くいくかな。」
ちょっと、浅すぎですね・・・・。そのあと段々勾配を急にして行くので・・・水深がどんどん浅くなる。
「そ、そっか・・・・。じゃ・・・ h= 1m にします。
n=0.02-1/3s で、h=1.0m、勾配 I = 1/5000=0.0002 の平均流速は・・・
U = 0.02-1× 1.0 2/3 ×√ 0.0002 =0.707 m/s でました。」
じゃ、単位幅当たりの流量 q を計算して。
「なにそれ?・・・あぁ・・・水路幅が無限だから・・・流量を単位幅当たりするのか。」
そうです。単位幅当たりの流量 q の単位は、m3/s /m = m2/s
となります。
「はい。 q = h × U = 1m×0.707m/s = 0.707m2/s です。」
波速は?フルード数は?
「 波速は・・・c = √(gh) =3.13m/s、 フルード数は Fr=0.707/3.13
= 0.23 となりましたぁ。」
いーですね。完全なる常流です。
「でも・・・勾配1/5,000てのは・・・5kmで1m低いだけ。ほとんど平らな高低差なのに、
水深が1mもあると、流速が70cm/sなんていう大きさになるんですね。」
なにしろ、幅が無限大なので、側壁摩擦がない分だけ流速が大きめになってしまいますが、
それでも、1/5,000勾配で水は流れるということです。
「で?これで・・・勾配を変えて行くんだ。・・・よし、次は、I = 1/4,000でやるぞ!
えっと・・・ I = 0.00025にして・・・・
U = 0.02-1× 1.0 2/3 ×√ 0.00025 =0.791 m/s だ。でましたぁ!!
簡単簡単。で、・・・単位幅当たりの流量q は
q = 0.791m2/s です。 うしし。 そして・・・・ 」
ちょっと、ちょっと、それ、違いますよ。間違いです。
「へ?だって、だんだん、勾配を急にして行くんでしょう?」
そうです。流量を一定にして、勾配を急にして行くのです。
その計算だと、水深が一定で、流量が段々大きくなっちゃいますよ。
「ぁれ?・・・・ほんとだ・・・・そっか、流量一定になっていない。」
そう、勾配を変化させれば、本来、流速も水深も変化するはずですよね。
「そ、そうだよなぁ。勾配を急にすれば、流速は大きくなって、水深は浅くなっていくんだ。
ど、どうやって流量一定での計算をするの?」
q = hU を一定にして U=n-1h2/3I1/2 で流速を計算する。
nは定数、q は一定、I は代入。
とすれば? U と h が未知量となりますね。で、式が2本ある。
「おぅ! わかた。 q=hU から、 U=q/h として、平均流速式に代入するんだ。」
そーです。そうすると?
「 q/h = n-1 h2/3 I1/2 になるので、両辺に hをかけて
q= n-1 h5/3 I1/2 となって・・・・
h5/3 = qn/I1/2 だから、
h = ( qn / I1/2 )3/5
でーす。 って・・・・あれ?ボクどうしたの?急にこんな計算すらすらと・・・」
よくできました。これで、流量と勾配と粗度係数を代入すると、水深が計算できます。
その水深h から、 U=q/h で平均流速が計算されます。
粗度係数0.02-1/3sでの
単位幅当たりの流量 q = 0.707m2/s 一定とする幅無限仮定の開水路ながれ
| 勾配 I | 水深 h(m) | 波速c(m/s) | 平均流速U(m/s) | フルード数Fr |
|
1/5000
|
1.0
|
3.13
|
0.707
|
0.23
|
|
1/4000
|
「あれ?1/4000のは?・・・って、それは計算しろってことか・・・・
で?どゆいうふうに勾配を変えて行くの?」
そうですね・・・・1/4000、1/2000、1/1000、1/500、1/400、1/200、1/100、1/80、1/60、1/50、1/40
ぐらいで、いかがでしょう?
「ひー・・・・そ、そんなに??」
さぁ!はじめ〜
「ひゃ・・・・ぽちぽち・・・・ぽち、ぽち・・・・
q=0.707m2/sとn=0.02と勾配Iを入れて・・・h = ( qn/I1/2)3/5 で hを計算して・・・
√(9.8×h)で波速cを計算して・・・U=q/hで平均流速を計算して・・・で U/cでフルード数・・・・」
| 勾配 I | 水深 h(m) | 波速c(m/s) | 平均流速U(m/s) | フルード数Fr=U/c |
|
1/5000
|
1.000
|
3.13
|
0.707
|
0.23
|
|
1/4000
|
0.935
|
3.02
|
0.756
|
0.25
|
|
1/2000
|
0.760
|
2.73
|
0.930
|
0.34
|
|
1/1000
|
0.617
|
2.46
|
1.146
|
0.57
|
|
1/500
|
0.501
|
2.22
|
1.411
|
0.64
|
|
1/400
|
0.467
|
2.14
|
1.514
|
0.71
|
|
1/200
|
0.381
|
1.93
|
1.856
|
0.96
|
|
1/100
|
0.309
|
1.74
|
2.288
|
1.31
|
|
1/80
|
0.289
|
1.68
|
2.446
|
1.46
|
|
1/60
|
0.265
|
1.61
|
2.668
|
1.66
|
|
1/50
|
0.251
|
1.57
|
2.817
|
1.78
|
|
1/40
|
0.235
|
1.52
|
3.009
|
1.98
|
「ひぃ〜・・・・終わった・・・大変でした。合ってるのかなぁ?でも・・・・なるほどねぇ・・・。」
おーいい具合に計算できたようですね。じゃ、批評して見て下さい。
「自分がやった計算ですが・・・ぅおっほーぅおん!じゃ、
この表からわかることは・・・・いっぱい、あります。
同じ流量を流した開水路で、勾配を段々急にしていく流れを表していますが、
水深は、だんだん浅くなっていき、1/5000と比べると100倍急になった1/50で1/4の水深になってます。
で・・・
水深の1/2乗に比例する波速も、段々遅くなっていきますが・・・1/5000と1/50では・・・あ、ちょうど半分ぐらいですね。
勾配が100倍大きくなっても、波速の変化は1/2にしかならないってことか・・・
で・・・平均流速は、だんだん速くなります。1/5000と1/50では・・・4倍速くなってます。
そして・・・フルード数ですが、これも勾配が大きくなると徐々に大きくなっていきます。
1/5000と1/50の比較は・・・7.74倍・・・だなぁ・・・あ!!
フルード数・・・・ Fr<1 で常流、 Fr>1 で射流でしたね。だったら、
勾配が1/200までは常流、それ以上きつい勾配では射流になりまーす。 おわりぃ!」
ぱちぱちぱちぱち〜すばらしぃ〜
すごい!よくできましたぁ。
「はー・・・じゃ、今日は終わりってことで・・・はぁはぁ・・・」
ぁぃゃ・・・まだです。
折角だから、 Fr=1 の流れを計算しましょう。
「ェー!まだやるのぉ?も〜いーょぅ」
でも・・・それやらないと、明日も最初から計算してもらうことになりますよ。
「やりましょう! はぃ。Fr=1の流れですね。どうすんの?」
Fr=U/c=1 だから、
U=c=√(gh)
U2 =gh
h= U2/g
ですね。
「はぁ、まぁそうですね・・・・。おぅ、で、 q =hU だから、それに代入する。」
q = h U = U2/g ×U = U3 /g
したがって
U3 = q g
よって
U = ( q g )1/3
「はぁ・・・なんか今日は、3/5乗やら1/3乗やらのべき乗の計算が多いなぁ・・・」
じゃ、計算して見て。
「 Fr=1となる、平均流速は U =1.906m/s です。その時の水深は h=0.371m です。」
Fr=1 になってますか?
「えっと・・・ √(gh) =1.907m/s ・・・あ、OKです。桁オチしてちょこっと違いますが、合ってます。」
すーぅばらしい。じゃ、その時の勾配は?
「ェ〜・・・こんどは、勾配?Fr=1になるときのぉ?ひー・・・・
U= n-1 h2/3 I1/2 から・・・・
I1/2 = Un /h2/3 で・・・・
I = ( Un / h2/3)2 = ( 1.906×0.02 ÷ 0.3712/3 )2 = 0.0055
つまり勾配 I は0.0055で・・・約183分の1です。約 1/183 です。
おー!さっきの表で1/200のとき Fr=0.96だったから・・・
それよりちょっと急なとき、Fr=1だし!
合ってるね!コレ、合ってますよ。あってるます。合ってなんぼだよ。」
ぃや〜お見事でした。
「もーぃぃ・・・水理学って計算ばっかりなんだね。」
ぇぇ。計算ばっかり ですよ。
「こんなのエクセルとかで、ぱっぱとやればいいのに。」
私はもちろんそうします。
でも・・・・それはこれらの意味内容そして実際を知っているからです。
初めての人は、ぅんぅん言いながらでも、こつこつ電卓で計算するほうがいいんです。
開水路の流れ
同じ流量でも、勾配が変わると流速も水深も変わる。
流れの状態は フルード数 で 評価
フルード数 Fr<1 常流ordinary flow
フルード数 Fr > 射流 jet flow
そして、Fr=1 となる流れは
Fr=1 限界流 critical flow
と呼ばれます。
Fr=1の流れ、限界流には、とってもとっても深い意味が込められているんです。
その話は、ずっと後に。
こんどこそ 跳ねる水
につづく。
|
Associate Professor Maebashi IInstitute of Technoloy |