[特別版 水理学シリーズ 目次]

【 水 理 学 第13回】(08.10.01)

【マニングの平均流速公式】

U = n-1   R2/ 3  I1/2

を解決しましょう。

「も〜・・・ほんと、謎にナゾに、なぞなぞ ですね。」
 

まず、径深 R から。 英語では Hydraulic radius といいます。(よめねぇ・・は・・はいどらぅりっくらでぃうス?)

radius は半径という意味です。 ちなみに直径は diameter 。
 

「ハー・・・そういえば・・・円の半径は 記号 r にするし 直径は d  だもんね。」
 

まぁ・・・rってのは半径っぽいので・・・径深は、大文字 R にしたんでしょう。

径深R は、水深と同じ次元、m、メートルです。もちろん深さという意味です。
 

径深R の 生まれ生い立ち 考えた方は、

土管などの円柱状の管の開水路流れを計算する際に、

底の丸い水路で、どうやって水深を考えるか?から始まったわけなんです。
 

「ふーん・・・矩形(長方形)断面なら水深は一定だもんね。あんまり悩まないか。」
 

底の丸い、でも水位は平らな形。

円を真っ直ぐ切り取った流積から、流れを代表する水深をどう評価すればいいのか?

しかも、摩擦面を考慮にいれて、です。
 

「まぁ、普通に考えれば・・・断面積を、なんかの長さで割る・・・・ですね。」

そうです。候補者は2つ。
 

水面長、または、水面下で水と接触している辺の長さですね。
 

「流積を水面長で割ると、平均水深っぽいですよ。」

そうなんです。でも・・・そうはしませんでした。
 

「で・・・水面下で水と接触している辺の長さ、潤辺ていうのか・・・その採用となったんですか。」

そうです。

「なんで?平均水深を考えれば・・・・水面長で割ったほうが妥当な気がするけど・・・」
 

平均流速公式に用いるその流れの代表する水深、それが径深。

流速を左右するのは、壁との摩擦力。

そして、その壁の影響を、水の粘性が内部に伝えます。

流れの断面広さに対して、どれだけの長さの壁があるのか。

R = A / S

径深には、その意味がキューっと込められています。
 

「きゅーっとね・・・・。それで、潤辺 S を計算するのか。・・・あるいは、測ればいいわけですね。」

そうです。
 

水深 h は、平均流速を決定する強い影響力のある量ですが、

それだけだと、

どんな断面の水路なの? どれぐらい壁面との摩擦を受けるの?

という情報が入っていません。
 

そこで、水深 hではなく、径深 R を使うのです。
 

径深Rは、流積内の側壁の摩擦力を考慮した換算水深であるといえます。
 

「そっか・・・昨日の計算水深0.2mで、幅1mの矩形断面水路の径深は0.143m。

水深 0.2mに対して、径深 0.143m ・・・水深の71.4%になってる。
 

その減った分だけ、壁面との摩擦の影響が大きいということなんですね。
 

もし、水深0.2mで・・

幅Bが10mなら、径深 R= 0.192m

幅はBが100mなら 径深 R =0.199m
 

なるほど。幅が広くなると、側壁の影響が相対的に減少するので、

径深は水深とほぼ同じになって行くんだ。 」
 

逆に、幅が 0.1m 、10cmしかない場合には、径深は R=0.04m

20cmの水深でも、換算水深としては、たったの4cmです。
 

流速は、その2/3乗に比例しますので、その分遅くなるという仕組みです。
 

「狭い水路は・・・壁の摩擦力を強く受けるので流れにくくなる、流速が遅くなる・・・」

そうです。

「なるほどねー。・・・長方形じゃない断面はどうするの?」

もちろん、

径深 R = 流積 A /潤辺  S

を、ひたすらそのまま計算します。
 

自然河川でも。円管底に浅い水深がある場合も、

測量や図面や計算から流積、断面積を計算し、潤辺 の長さを測って、

そして径深を計算するのです。
 

平均流速公式は、このように、一つの径深 R  という量の中に、

開水路流れの流積形状のもつ、摩擦抵抗の大きさを挿入しているというわけです。

「考えましたねー」


「じゃ・・・つぎ。粗度係数 n は?」

平均流速公式は、長い長い科学の歴史の中で、いくつもあるのですが、

有名な式は

U =  C ( R I ) 1/2

というシェジーの平均流速公式です。こっちの方が古い。

「へ〜・・・・n-1の代わりに、Cか・・・。で・・・径深は・・・R 2/3 じゃなくて R1/2 ですね。」

シェジーの平均流速公式は、関数電卓が要りませんね。
 

その昔は、この式が開水路の平均流速を計算する式として一般的に使われていて、

Cという摩擦係数とは言わない・・・シェジー係数を選択していました。確か・・・30ぐらいの数でした。多分
 

でも、マニングの平均流速公式の方が実際の問題と良く合うので、

現在はマニングの平均流速公式が主流です。世界中で。
 

ほかの平均流速公式もあるのですが・・・・式がちょいと複雑で、ウケません。
 

「で? 粗度係数  n は、なんで n-1で使うの?」

ぃや〜真意のほどは、わかりませんが・・・
 

シェジー係数C だと、その数が大きくなればなるほど、面摩擦が少なくなり、

平均流速は速くなっていきます。係数が大きくなると粗度が小さく流速は大きくなる。

「それはちょっと摩擦係数っぽくないですね。」
 

そうなんです。ですからシェジー係数Cは粗度係数とは呼ばれません。
 

粗度係数を逆数にしてかけるマニングの平均流速公式では、

粗度係数 nが大きくなると、速度が遅くなります。
 

「ふむ・・・・なるほど。イメージですね。粗度係数が大きいという事は粗度も大きい。」
 

まぁ、多分、そんなところではないでしょうかね。多分多分多分・・・
 

管路の流れでは、管路壁の摩擦係数λというのがあり、それは無次元量ですが、

それもやはり、λが大きいと、摩擦が大きいとなっています。
 

平均流速公式は、実用上の式ですから、粗度係数 n は、

選択しやすく、イメージしやすい方が良いのでしょう。多分
 

次に、粗度係数 n の大きさなんですが、通常は、0.05m-1/3s ぐらいまでです。

しかし、実際問題では、

粗度係数を0.05m-1/3s 以上に大きく取らないと、実際の流れに合わないという場合があり、

n=0.08m-1/3s とか、場合によってはn=0.5m-1/3s 、さらにはn=1m-1/3s 以上などどいう

べらぼうな値を用いるケースもでます。
 

「なんでですか?それでいいの?」
 

実は、そうした流れは、ほんとうはマニングの平均流速公式の適用範囲外なのです。


粗度係数 n を大きく取らないと実際と合わない流れ、その1

【急傾斜で石ごろごろの激流河川】

石に水流が直接ぶつかるためのエネルギー損失、

石が流れを乱したことによる渦粘性によるエネルギー損失、

流速が速いため水面空気との摩擦によるエネルギー損失、

水しぶきが形成されたことによるエネルギー損失など

平均流速公式の中では、全く反映できないエネルギー損失が大きい流れですね。

でも、しょうがないので、損失はなんでもかんでも全部粗度係数 n に任せる・・・・となります。
 

粗度係数 n を大きく取らないと実際と合わない流れ、その2

【どろどろの泥水・・・粘性の強い流れ】

平均流速公式は、断面積、潤辺 、勾配、そして粗度係数だけで構成されています。

その外の情報は入っていません。水の温度も密度も粘性も、

流れの乱れ具合も、なーんにも入っていません。

従って、微細な土の粒子が、分子レベルで交じり合った水や、

活性汚泥濃度の濃い水などは、そもそも計算が合わなくなります。

でも、しょうがないので、それらが原因のエネルギー損失も全部粗度係数 n に任せる・・・・となります。
 
 

もうひとつ、平均流速公式が合わない・・・という例があります。

【非定常の流れ】

例えば洪水時です。

洪水時の水流の計算でも、簡易にこの平均流速公式が用いられます。

あるいは、H-Q曲線式という洪水時の流量などを推定する式にも

マニングの粗度係数が適用されます。
 

このとき、増水時、つまり多量の流量が流れ水位が上昇する時と

減水字、洪水の終わり頃、水が引いて水位が低下する時では、

摩擦係数の選択を換えなければならない・・・

そうでないと、現実と合わない例が多くあります。
 

増水時と減水時・・・水深が同じになることもありますよね。
 

「つまり・・・だんだん水かさが増えてるときの、水深1m と

だんだん水かさが減って行く時の、水深1m

ですね。」
 

そうです。同じ水深で、同じ川なんだから同じ粗度を用いたくなるわけですが、

そうすると、合わないのです。実際と。

「増水時と減水時と、どっちの摩擦係数が大きいの?」
 

一般的には増水時です。減水時に同じ摩擦係数を選択すると、計算された流速が遅くなってしまうのです。

それで、よく、

洪水の減水期間には河床の粗度が下がる・・・さらには、河床の摩擦抵抗が弱まる・・・と

勘違いされます。

「え?勘違いなの?」

勘違いです。
 

この理由は、洪水流れが非定常だからです。

増水時は、流れの慣性力が強く、実流れとの適合計算では、大きめの粗度係数が算出されます。

ところが減水時には、流れの慣性力が落ち、水面勾配が徐々に緩やかになっていく流れです。

ですから、実流との適合計算では、粗度係数が小さく算出されるのです。
 

定常で等流を仮定した式を、

めちゃくちゃ非定常であまりにも不等流な流れにむりやり応用する、

というところに大きな問題があるのです。

「はぁ・・・でも、それが・・・平均流速公式の限界ですね。」

その通り。その理解が大事ですね。

使うな!といってるわけでは全くありません。

ただ、定常で等流仮定の超単純な式ごときを用いて、現実と合った合わないを

あんまり議論しても意味がありません。

マニングの平均流速公式の計算結果は、”うんそんなもんだな”ぐらいの認識でよいのです。

それでも十分に便利なのですから。

「うん。そんな もんでしょうね・・・・。」


【マニングの平均流速公式の適用範囲】

ますは勾配です。

緩やかな勾配では1/20,000でも、それなりに妥当な流速値が計算されるようです。

しかし、急勾配水路では、やはり限界があります。

1/10勾配なんぞとなれば、ほんとは滝のような流れ。

さすがに平均流速公式の計算結果は 現実とズレるでしょう。

「なんでです?」

平均流速公式が大事にしている仮定の一つに、

静水圧

があります。

「しずかな水圧ですな。」

静止した水の状態での水圧です。水路の流れで、各断面での水圧が、

p=ρgh 水深に比例する水圧分布になっていることが、この式の大前提条件なのです。
 

そして、河床との摩擦力と慣性力がつりあって等流状態を維持することも大前提。
 

あまりに急な傾斜の流れでは、等流の仮定すら怪しいですね。
 

また、水深は、水底から水面までの最短長さ、としています。

斜面が目でわかるほど傾いてくると・・・・

鉛直に測った水深と、水路面に垂直方向の水深は、だいぶずれてきますね。
 

「なるほど・・・それほど急な斜面の流れに摘要しても、合わない、ってことですね。」
 

そうです。

勾配は、1/30ぐらいまでなら、まぁ妥当として良いと思います。多分


水深はどうですか?」

そうですね。残るは水深。

まず・・・浅いほうからですが、どう考えても、ミリ以下はダメじゃないかと・・・・思います。

特に、浅い場合には、床の凸凹が強く影響しますね。

凸凹高さが水深の1/2なんて場合には、絶対ダメでしょう。おそらく。

「おそらくって・・・知らないの?」

ちょっと調査不足ですが・・・流体力学の知見に照らし合わせれば

表面張力の影響が強く出るほど浅い水深や、

河床の凸凹が引き起こす乱流や非定常性を想像すると・・・・。
 

まぁつるつるの面であれば、水深 5mm位までは適用できるのかもしれません。

(無理かな)
 

「うーん・・・アバウトだなぁ・・・でも、まぁそうでしょうね。」

で、深いほうですが、こちらは、長波の理論が成り立つ範囲で・・・・、

静水圧分布を仮定した流れです。水面の変化が水底にまで及ぶ流れです。

なんつっても断面の平均流速ですから。

まぁ現実的には・・・・10m〜20m位の水深までではないかと・・・・

だから、ダム湖の提体近くの深い流れの場合には

・・・・ちょっとキビシイのではないかと、思いますが・・・使われてます普通に
 

「水深に関しては、コメント程度、ってことですね。」

そです。そのうち調査したぃと・・・


「はー長かった・・・・平均流速公式の話は・・・長かったなぁ」

あ、コレ私、得意なんで。ずらずらいけます。で、コレ、まだまだ続きますょ。

なんか、脱窒と同じぐらい、いやそれ以上かな・・・・

「え?まだまだ?」

そうです。そもそも、開水路流れは水理学の最重要課題。

一般的な土木工事にも強く関わる現象です。

「で、でも、今日は終わりでしょ。」



【そこで一言】

目的は!

ニング平均流速公式の

意味と適用範囲を理解して

開水路流れの性質を理解することです。

とっても便利な計算式

流れが見える計算式


 第14話 

2種類の開水路流れ

につづく。



補足

【動水半径】

開水路平均流速公式に用いられる径深は、円管流れの計算においても使用されます。

径深は、動水半径とも呼ばれます。

式は同じですが、管断面が全て水で満たされる管路流れの場合には、

管の直径 d

管断面積 A = πd2/4

円の周長 S = πd

径深(動水半径) R = A/S = d/4

となり、円管直径の1/4の長さ(深さ)となります。

 
Editor (oo)Tsuyoshi UMETSU Ph.D.
Associate Professor 
Maebashi IInstitute of Technoloy