[特別版 水理学シリーズ 目次]

【 水 理 学 第10回】(08.09.28)

のぅ・・・でっかーい構造物を作るときにじゃ。

設計の段階で・・・・ちょこっと、模型を作って試してみたくならぬか?

「大きいのを作る前に、どうなるのかを予想したいわけですね。

デザインとか・・・強度とか・・・

あ、強度はちょっとわからないかなぁ?」

ぅむぅむ、強度も心配じゃ。

例えば、おーきな橋、瀬戸大橋みたいな巨大橋梁を作るときもじゃ、

小さな模型作って、

カッコーィ か? やら、落ちないのか?やらを 知りたくなるのぅ。

「なるでしょうね。 でも・・・この水理学話と関係あるの?」


で。

相似って しってる?
 

「はぃ。ほうきとちりとりと雑巾。」

ぉ、おう・・・はきはき・・・・ふきふき・・・や〜キレイキレイ・・・・

違う。

相 似 じ ゃ 。

「知ってますよ。同じ形のまま、大きさは違うものです。」

うむ。正解。(そ、そんなに簡単な定義でいいの?)

じゃが・・・それは、形の相似だけを言っておる。

「え?他に何かあるの??」

ある。力の相似、エネルギー量の相似、それらの形以外の状態の相似じゃな。

【 幾何学的 相似 と 力学的 相似 】

今日は、流れにまつわる相似則の話なのですじゃ・・・・。

「む・・・難しそう・・・・」


まぁ今日の目標は、

〜へー・・・そんなことも、あるんだねぇ・・・

位の認識で、良いですじゃ。気楽に聞いてくだされ。
 

直径1mのコンクリートの管で、管路を作って水を運びたいということになった としようぞ。

「直径1mは、相当大きいですね。重いし・・・流れる水も、けっこうな量でしょうね。」

そうじゃのぅ。重さも、量も、すごいことになる。

想像がしにくい。
 

そこで、

直径10cmのコンクリート管で、同じような管路を作って実験してみようぞ!という構想に至る。

この際、外枠のコンクリの厚さんぞは、気にせんでェェ。水理学じゃ。
 

「はぁ・・・・直径 1m に対して 直径 0.1m ですか、

1/10の模型の大きさになりますね。簡単じゃないですか。」
 

うむ。大きさを1/10にする。これが 幾何学的相似 じゃな。
 

で、その幾何学的相似なる模型で・・・さらに、流れを相似させたい。

つまり、流れの状況を、あい似せたい、わけじゃ。
 

愛、二世帯?・・・・同じようにしたいってわけですね。」

うむ。
 

実際の直径1mの管では、平均流速を 0. 1m/s で流すという設計だとする。

結構遅いかのぅ。

「なるほど。直径1mの管の中は、平均的に秒速10cmで水が流れるってわけですね。」
 

うむ。 それを1/10の模型で、再現しようとした時に・・・・・

どれぐらいの流速にすればいいんじゃろう?
 

「へ?1/10の模型なんだから・・・流速も1/10でいいんじゃないの。 0.01m/s だね。

1cm/s だ。さらにゆっくりな流れだね。でも模型も1/10なんだから。相似相似・・・・」
 

うむ ぅむ。 で、何がいいのか?というと・・・・

1/10模型として、元の実物の流れを、ちゃんと再現しておるのかなぁ?

という疑問を持つわけじゃ。
 

「え?ダメ・・・なの?」


じゃ、計算を始めましょう。

直径1mの内径の断面積は A=πd2/4= 0.785m2

平均流速は U=0.1m/s

流量 Q = 0.0785m3/s  =78.5 L/s

となりましたぁ。

1秒で80L。ご家庭の風呂が 10秒で溢れる量です。
 

「解りました。じゃ、その1/10模型に、流速  0.01m/s で流しましょう・・・流量は・・・・」
 

ちょっと待って。

ついでに、レイノルズ数 Re も計算してみましょうょ。ね。

水温は20℃ってことで統一して・・動粘度 ν = 1.0×10-6 m2/s とします。

管路では、 Re = U × d / ν でしたね・・・・そうすると・・・

Re = 0.1m/s × 1.0m / (1.0×10-6 m2/s )  = 100,000

お〜レイノルズ数は、ぴったり10万ですなぁ。見事な乱流。
 

「はいはい、気が済みましたか?じゃ、次にいって。」
 

えっと・・・大きさが1/10なので、流速も1/10にするってことでしたね。

「そーそー。そうしましょ。まさに相似じゃないですか、それが。」
 

じゃ、計算してみましょう。

直径 d=0.1m の断面積は・・・ A=3.14×0.12/4= 0.00785m2 ですね・・・。

「あれ??断面積は1/100になっちゃったなぁ?あ、そっか。面積は長さを2乗してるから・・いいのか。」
 

で・・・平均流速 U を0.01m/s とする・・・と主張しておる。

流量は・・・・

Q= 0.01m/s × 0.00785m2 = 0.0000785m3/s = 0.0785L/s

となりますね。

・・・なんかもんのすごく小さくないですか?流量が、なんと1/1000になってますよね。
 

一秒に80ccですよ。1分かけてもバケツから溢れません。
 

「ぇ・・・・そ、そうね。ちょっと少ないかなぁ?

でも、いいの!これで。相似、相似。模型が小さいのだから、量も少ない。速度もおそぃんですっ。」

あの〜

レイノルズ・・・数も・・・計算して見ては・・・いかがでしょうか??どうでしょう?・・・ねぇ・・・れ い の る ず ・・・・
 

「ぅ、うるさいなぁ・・・・じゃ、やってみるょ。

えっと・・・・ Re =Ud/ν で・・・動粘度νは同じだよなぁ・・・同じ水だし・・・

Re = 0.01/s × 0.1m / (1.0×10-6 m2/s )  = 1,000

はぃ。レイノルズ数は 1,000。 千、せん、です。

満足した?」
 

・・・あの・・・・レイノルズ数が、1,000の流れってのはですね・・・・。そ、そ、そ・・・・
 

「なに。文句あるの?・・・・

レイノルズ数が1000だよっ。 ぇ? 千?・・・て こ と は・・・

そっ そ そ 層流・・・だ。おもいっきり層流・・・」
 

変でしょう?
 

「変です。」
 

実物のレイノルズ数は10万で見事な乱流。

で、10/1模型で流速1/10にするとレイノルズ数は"千"で文句なしの層流。
 

これ、流れを似せたい目的の、1/10模型流れとして ふさわしい と思いますか?
 

「おも・・おも・・・・思えません。」
 

ちょっと見てみましょう。はい、これがレイノルズ数10万の流れ、

インクはめちゃくちゃに混じって、完全に空色ですね。乱流そのものです。

「へぇ」

で、これが、レイノルズ数1000の流れ。

インクが見事な一本スジ。完全な層流状態です。

「へぇ・・・・あっしが 勘違い していたで ゲス・・・」


この話が、流れの力学的相似を考えるテーマでした。
 

もう既に、充分に、お解かりいただけたとは思いますが、

管路の流れの力学的相似は、幾何学的に大きさが変わっても、流れの状態は同じにする ことです。
 

流れの状態は、管径、流速や圧力、壁面との粘性力などの物理量が相互に作用した結果です。

それらを1/10にしても、流れの状態を同じにした小型模型の流れは再現できません。
 

では?何を同じにすればよいのか?
 

そうですね。そう。 レイノルズ数 です。
 

即ち、レイノルズ数という、次元の無い数、無次元量を用いて、

レイノルズ数が同じになるような流れを作れば、

力学的に 相似な 流れ として考えることができるのでしたぁ。
 

めでたし、めでたし。


「と、いうことはですね・・・。

1/10の模型でもレイノルズ数を100,000にする平均流速だ。

それを計算してみます。しゃくなんで。

Re = 100,000 = U (m/s) × 0.1 (m) / 10-6 (m2/s)

U = 100000 ×10-6 (m2/s)  / 0.1(m)  = 1.0 (m/s)

ありゃりゃ??? 1m/s なんて!答えが出ちゃいましたよ。

1/10模型の方が・・・10倍速い流速なんだ・・・
 

「そうです。しょうがないですよね。そうなったんだから。」
 

流量Qは・・・・

Q=U×A = 1.0m/s × 0.00785m2 = 0.00785m3/s = 7.85L/s

「・・・・流量は1/10だ。」

そうです。

「なんだー・・・1/10の模型では、流量を1/10にすればよかったのか〜」
 

はい。その通り。

でも、この場合には、レイノルズ数を同じにしたら、たまたま流量が相似になってる

とご理解くださいね。

そっちの理解のほうが、応用性が高いですから。



【そこで一言】

水理学では

レイノルズの相似則は管路の流れに用いられるのが一般的。

「え?じゃ、開水路流れでは・・別なのがあるの?」
 



 第11話 

開水路流れ

につづく。


 
Editor (oo)Tsuyoshi UMETSU Ph.D.
Associate Professor 
Maebashi IInstitute of Technoloy