[特別版 水理学シリーズ 目次]

【 水 理 学 第9回】(08.09.27)


【動粘性係数 動粘度 ν】

ν = μ / ρ

単位は m2 /s

でしたね。

「はぃ。そぅでした。そして、何に使うのか、どんな意味があるのか、

そんなことが、さっぱりわかっていない量でしたぁ。」



そ こ で ・・・・

流れの状態を表す、びっくり仰天の、式をご紹介しましょう。

「また・・・ですか・・・もー・・・」

 Re = U L / ν

・・・これ です。 ど、どうでしょうか・・・

「・・・まるっきり意味不明ですね。なんですか? Re って。なんて読むの?」

レイノルズ数 と読みます。

「うひー・・・・きっとまた人の名前だな・・・。で? U は平均流速ですか?」

まぁ平均流速として、いいです。正しくは、流れ場の代表流速です。

「で? L は?なにコレ?」

L は 流れ場の代表長さ です。

代表・・・ときましたね。 そして・・・それらを動粘性係数、動粘度 νで割る・・・。」
 

単位を見てみましょう。

Re = U L / ν

U は m/s  、 L は m。 U×L は m2/s

νは m2/s
 

「と、いうことは・・・・ややっ・・・m2/s ÷ m2/s ・・・・無次元です!また出ましたね。
 

ということは、レイノルズ数は、なにかと、なにかを比較している量なんですね。
 

U × L という量と、 動粘度 νを比較している量ってことか・・・」
 

そうです。お見事。
 

「でも・・・意味がサッパリ解らないなぁ。

なに? 代表流速×代表長さ という量は?なにを意味するんだろう。」


では、例をご紹介しましょう。
 

内径が d の透明ガラスで出来た管路の流れです。直径 d の管路の水の流れを想像して下さい。
 


 

「ハィ・・・。イメージ イメージ・・・・ 真っ直ぐなガラス管を・・・水が流れる・・・ぁぁ見えてきました・・・

とうめーなガラス管を、透明な水が・・流れています・・・が・・・・透明すぎて流れが見えませんよ。」
 

じゃ、インクを流しましょう。管の断面中心に、細く、ちょとづつ、インクを入れます。色は何がいいですか。

「じゃ、で、アオで。」

青インク挿入〜ちゅー
 

「・・・・・おー見えた見えた・・・ゆっくり流れてますね・・・・

青インクが真っ直ぐ流れて行く・・・キレイ・・・混じらないで・・・すーっと流れてます。」
 

それでは、流量を多くして、流速を速くしてみましょう。くぃっ。
 

「あっ、あっ・・・だめですよ・・・ああー・・・乱れちゃった・・・

一筋で、真っ直ぐ流れていた青インクが・・・ゆらゆら揺れて
 


 

・・・・あー・・・げちょ げちょ に乱れたょ、混じって、空色になっちゃいました。
 

だめですよ。そんなことしたら、流れが乱れます。元に戻して。」
 

はぃはぃ。くぃっ。・・・どうですか?
 

「ぁ・・・ぁ、段々戻ってきました。ぉ、ゆらゆらになった・・・。

・・・おーよしよし、また 一本線に戻りましたぁ。 ・・・ぅしし。
 

よし、これですよ。これ。 乱れのない、スジ状に流れてる。いいネェ。」
 

お気づきですか?管路の流れには2種類あるのです。

「へ?・・・わかった!キレイな流れと 汚い流れですね・・・なんて、そこまではボケませんよ。もう。

乱れの無い流れ と 乱れた流れ ですね!」
 

そうです。

どうやら、ゆっくり流れている時には管内の流れは乱れないで、

管の方向に沿って、真っ直ぐ流れて行くようですね。

水分子も整列してよそ見しないで行進しているのでしょうか。
 

しかし、流速を上げると、ゆらゆらと乱れが生じて、

もっと、流速を大きくすると、

めちゃくちゃに乱れた流れになってしまうようです。

「水分子が暴れている感じですね。いやなことでもあったんでしょうか?なんつって。
 

なぜ、こんな現象が生じるのでしょうか?
 

「それに、粘性が関係あると言いたいわけですね。」
 

そうです。

管の内壁面は静止しています。そのすぐ側の水分子は、

管が静止してるため、動けずに流速がゼロだとします。
 

そして、そこから離れるに従って、粘性の影響が生じ、粘性力が発生します。

壁近傍の水分子はとても強く壁流速ゼロの影響を受けるでしょう。

粘性力の式 τ=μ Δu/Δh が示すように。
 

「ふむふむ。で?なんで乱れるの?」
 

1万メートルのトラック競技で・・・スタートから途中までは、

見事な集団で整然と走ってますよね。

「ぉい、マラソンなのか?この話!」

で・・・・ラスト前、スパートをかけると隊列が乱れて、ぐちゃぐちゃになる・・・・

「それと同じ?違うでしょう。」

いや・・・まずはイメージです。イメージ。
 

ゆっくり流れているときには、

壁に近い水分子は壁の影響で粘性を強く受けて、

ゆっくり壁に沿って流れますね。

管断面中央の水分子も、その壁際の粘性の影響を受けて、自由にうろつけません。

整然と流れます。
 

本当は、水の分子同士は、お互いぶつかり合ってますから、

そのとき方向が変わることもあると 思いませんか?

オレこっち行くー・・・とかいって。

でも、ゆっくり流れでは、他の分子が真っ直ぐ流れているので、

その粘性の影響を受けて、ちょっと方向変えた水分子は、

管の方向に整えられてしまうのです。
 

水分子は、本当はゆらゆらと勝手に動こうとしたいのですが、

粘性がお互いの自由度を奪うのです。

勝手に動こうとする慣性力よりも、みんなで整列しましょうという粘性力が強い。
 

「で・・・流速が速くなると・・・・?」

水分子は、ゆらゆらとゆれる力が強くなります。
 

お互いの行動を縛る粘性という性質よりも、勝手に動くぞ!という慣性の性質が勝ってきます。
 

それを抑えることができなくなったとき、

最初はちょっと揺れただけなのですが、

隣も そのとなりも そのまた隣の水分子も 勝手に揺れ動くようになっていきます。
 

そして、さらに流れが速いと、勝手にバラバラに管の中を移動してしまいます。
 

もちろん、平均的には、上流から下流側に移動するわけですが、

水分子同士が擦れあう粘性力よりも、水分子が流れようとする慣性力が勝ってしまうのです。

そして・・・

「乱れて、混じってしまう。真っ直ぐ流れるのではなく、あっち行ったりコッチきたりの流れか・・・」

そうです。
 

この乱れ無しと乱れた流れの2種類には名前がついています。
 

インクが混じらずに真っ直ぐ流れる状態は 層流 ( laminer flow )

インクが混じって乱れて流れる状態は 乱流 ( turbulent flow )

と呼ばれます。
 

「へー。層流ですか。はじめて聞きました。乱流はなんとなく知ってました。 ランリュ〜」
 

層流と乱流の違いはとても大きいのです。

管路の流れのエネルギー損失を計算する時には

流れが 層流か 乱流かで 使う式が 区別されます。


「わかりました。・・・で?何の話でしたっけか?

あ、レイノルズ数 Re じゃん。それと、動粘性係数 νだよ。忘れるとこだった。」
 

じゃ、層流と乱流がイメージできたところで。

レイノルズ数を計算してみましょう!

「けっ、計算か・・・・」
 

このガラス管を流れる平均流速 U は、出口の流量を測れば計算できますね。

「 あ、 Q = AU ですね。 A は直径が d だから・・・  A = πd2/4 です。」
 

そして、これは水ですから、温度を測れば正しい動粘性係数ν を選択できますね。
 

「ぉぅっ!そうすると、そのなんだかは不明だけど、レイノルズ数 Re というものは・・・計算できるのか!

ちょとまって。 L は?代表長さはどうするんですか? このガラス管の長さですか?」
 

いえ。この場合、代表長さは、管の直径 d を用います。
 

代表長さは、考えたい流れ場の中で、

最も流れに大きく影響のあると考えられる長さ、を選択します。
 

「ふーん。なんで管の直径 d が流れの状態を決定付けるの?」
 

管路の流れでは、粘性の影響は管の壁からの距離に強く影響されるからです。
 

「そうか・・・そういうもんですか・・・。ま、いいや。」
 

管路の流れのレイノルズ数 Re は、

Re = U d / ν

U:平均流速 (m/s)

d:管の直径 (m)

ν:水の動粘性係数 (m2/s)

で計算するんですね・・・。」
 

ちょとやってみて。
 

「ほぅ・・・層流の時の レイノルズ数は、 1000位でした・・・・。

流れが乱流になってからのレイノルズ数は・・・・おぉ!、かるーく10,000超えましたよ。」
 

ぱちぱちぱち〜。すばらしい。
 

レイノルズ数は、U と d と νという3つの物理量 から構成されています。

ですから、その数には、3つの物理量分の意味が込められます。
 

まず平均流速 U ですが、

管の中では速い場所も遅い場所もありますね、だから

平均の流速を計算して、その流れの中での代表的な流速として考えることにするのです。
 

ガラス管の直径 d は代表長さ L ですが、

どんな場所を、どんな物体があるところを?という意味が込められています。
 

この2つをかけた、 U × d ですが、実は流れの持つ慣性力の度合いを示すものになるのです。

”こんな場所を、こんな流速で流れてます”

→ 邪魔な物がこの程度のところを(L)、こんな流速(U)で流れてます。
 

どうでしょう?これが慣性力の度合いを示す イメージってことで。
 

「か、慣性力の度合い・・・ですか。なんで度合?・・・あ、単位が変だもんね。」

まぁそうです。

平均流速 U が大きければ大きいほど、慣性力は大きい。
 

「そ、そのイメージは出来ますけど・・・管の直径d が大きいのが?

なんで、慣性力の大きさに繋がるんでしょう?」

この管路の流れ場合には・・・広いと流れやすい、というのでは、ダメですか?・・・ダメ?
 

管の直径が大きいと、慣性力を阻止しようとする粘性力の影響が小さくなる。

では、いかがでしょう?

「はーぁ・・・管が大きいと、流れが流速ゼロの壁から遠い場所が広くなる、ってことですか!」

そうです。そうです。
 

そして、分母の 動粘性係νは、粘性力の度合いを現しています。

水の性質としての粘度ではなく、実際に動いている水としての要素が入っている動粘度です。
 

粘度μは、その流体、この場合水ですが、その性質としての粘性の大きさを示していますが、

質量、つまり分子の詰まり具合は含まれていません。
 

動粘度 ν =μ/ρ には密度が参加しています。

動粘性係数は、流れ場の流体の粘性とその分子密度と分子の運動状態を示しているのです。
 

レイノルズ数 = 流れの慣性力の度合い / 流れの粘性力の度合い

という比較をしています。

そして

レイノルズ数には、

 流れの速さはどのぐらい? と

 その場はどんなところ?と

 どんな流体なの?水?空気?温度は?

という、意味がつまっている数です。
 

「はー・・・流れの慣性力と粘性力のバランスを示して・・・・・

そして、どんな速さで、どんな場所で、何の流体か、を合わせえて計算したもの、てことですか。」
 

そして、それは無次元量。他の次元に惑わされない数となっているのです。
 

「でも・・・、まだ、何に使うのかが解りません。」

その数を良く知る人は、レイノルズ数を教えていただけると、流れの状態がイメージできます。
 

「え?ボクには無理ですょ。」

ええ。まだ、慣れていないので出来ないでしょうけれど、

Re=100,000です、と言われれば、あーコンくらい乱れた流れかーと、

イメージし、見事な乱流だ、と理解します。
 

Re=100ですね、と言われれば、おぅそりゃ見事な層流ですなぁ、遅いですなぁ・・・とイメージします。

Re=100の流れの中に障害物を置いた際の渦の発生状況なども推測できます。
 

「そ、そんなの・・・・流速を教えてもらうほうがいいんじゃないの?

平均流速で○○m/s ですって。

そっちのほうが、具体的だし、解りやすいよ。」
 

しかし、その場合には、さらに、いくつか質問しないと、流れの状態はわかりません。
 

ぁぁ流速は解りました。それで?その流れ場の、

管径はいくつですか?水ですか?空気ですか?温度は何度?圧力はいくら?などなどを聞く必要があります。
 

レイノルズ数を、一つ、びしっと言ってくれれば、それらを総合した流れの状態を理解することができるのです。
 

「ふーん・・・専門家の人が理解できる量だね。」

まぁね。例えば、テレビでTOPIX が1,000台を割りましたぁ、

とか

熱帯魚水槽で、亜硝酸が10mg/L超えました〜ウキー

とか

23回/K のスゴ台でよ〜600もカラ回ししちゃった・・・

とか

言われても、経済や水処理やパチンコに関わらない人には、解らないですよね。

それと似たようなもんです。

「めちゃくちゃなまとめでしたね。」


【空気と水の動粘性係数とレイノルズ数】

直径0.1mの管路の流れで、Re=1,000となる、水の流れと空気の流れの流速を計算して下さい。

温度は20℃、1気圧で。
 

「はぁ・・・やってみるか。直径10cmで水で、レイノルズ数が千ね。・・・

電卓ポチポチ・・・書きカキ・・・

Re=Ud/ν なんで・・・ U = ν× Re/d か・・・・

Re=1,000をd=0.1mで割る・・・・ U = 10,000×νだ。なんだ。暗算じゃん。

水のν=1.0× 10-6 = 0.000001 m2/s・・・だから・・・・
 

U(水) = 0.01m/s = 10mm/s   おっそぃねー。秒速1cm か。これでRe=1000ね。
 

次は空気。空気のν=15.12×10-6  m2/s。

なんだァ、この倍率かければいいんじゃん。15.12倍。暗算だ。
 

U(空気) = 0.151m/s = 151mm/s  おや?秒速15cm・・・・ハヤィね。ひゅーって感じだ。
 

へー。同じレイノルズ数にするのに、水と空気の流速は15倍違うのか。
 

・・・ということは?

Re=2000が層流の限界と仮定すれば、Re=1,000というのは、層流ですね・・・。

水では平均流速が 2cm/s までは層流だけど、

空気の流れでは、平均流速が30cm/sぐらいまで層流でいられる

ってことですか。
 

なんか・・・水のほうが乱れるのが早いんだね。空気はなかなか・・・乱れない。
 

???てことは?水の流れは粘性の影響が小さいの?
 

そうです。水の流れは、空気の流れと比べると、慣性力に対して粘性力が小さい。

水の流れではちょっとの流速の違いで、流れの状態が変化しやすい。

ということですね。
 

レイノルズ数=慣性力/粘性力
 

水の流れは空気の流れよりも、慣性力がとっても大きいと納得するのも一興です。

なんつっても空気よりも水は、質量が800倍近いのですから。
 

ぁ、でも、粘性力の大きさは、もちろん、空気より水の方が大きいですよ。

ぃや、あるいは、空気の流れは慣性力が小さい・・・だから粘性力がのさばる・・・と言うべきか・・・うーむ・・・うーむ・・・

「な、なんか・・・ごちゃごちゃしてきたょ。もう、寝る・・・・。



【そこで一言】

レイノルズ数 Re は、流れの慣性力と粘性力の比を計算した数です。

そのことにより、レイノルズ数 Re は流れの状態を表します。

Re は 0から始まり、流速のゆくまま数百万の大きさまで・・・。

Re < 2,000 では、間違いなく 層流

Re > 5,000 では、ほぼ 乱流

となります。

「なんか・・・あやふやなんだね。その・・・2000から5000の間は何なの?」

乱れが 生じそうで 生じない・・・乱れないようで・・・乱れる・・・

2000 < Re < 5000 あたりまでは、

場合によって層流、乱流。 あれれ・・・層流だったのに乱流になっちゃった・・・,

となる落ち着かない状態なので、

遷 移 領 域

といわれますぅ。



あしたは、 レイノルズの相似則

というお話デース。 

 第10話 

につづく。


 
Editor (oo)Tsuyoshi UMETSU Ph.D.
Associate Professor 
Maebashi IInstitute of Technoloy