[特別版 水理学シリーズ 目次]

【 水 理 学 第6回】(08.09.24)

以前、カワハギを釣りにいったことがあってな・・・乗り合い漁船でじゃ。

「はぁ・・・・水理学なのに、釣りの話なんですか?」

うむ。

水深が40m位のところのカワハギを釣ったのじゃが・・・・

引いて急いで釣り上げると・・・・見事に、ダッチョ〜しておった。

つまり、オケツから腸が飛び出ているのじゃ。結構、ゲロッとじゃ。
 

「なっ、なんでです?・・・・あ、圧力ですね。浮き袋の気体が引き上げられていくうちに・・・・」

そうじゃ。40mだから、4気圧。 その海底で優雅に過していたカワハギだったが、

一気に引き上げたので、

浮き袋の中の気体が4倍ぐらいに膨れ上がったわけじゃ。

そして、その膨れた浮き袋が腸をケツから押し出したのじゃ。むごいのぅ。
 

「そ、それは・・・ひどい。じゃぁ、活きて持って帰れなかったですね。」
 

それが、すごいことに、活きていた。1日後には、ダッチョが全部戻って、

普通のカワハギになって水槽で泳いでおった。びっくりじゃったなぁ・・・・・

「おとといの復習話ですね。いや、復讐か?


さて、摩擦って知ってますか?
 

「摩擦ぐらぃ、知ってますよ。ゴシゴシゴシゴシ・・・・ひー熱い・・・・これでしょう?」 (コシコ・・・シコシコも?)
 

そうです。

物体同士が正面からぶつかり合うのではなく、面と面が平行にぺたっとくっついて

こすれあう時、摩擦力という力が発生します。

というか、摩擦というエネルギー損失が生じます。

「は?エネルギー損失? なんですか、それ・・・・」
 

ここで・・・ニュートンの第一法則ちょこっと、でるんですけど・・・よろしいですかね?

「・・・またか・・・・どうぞ。」
 

【慣性の法則】

動いている物体は、いつまでも動き続けようとします。余計に力を与えなくても。

そして、静止している物体は、いつまでも静止し続けたいのでーす。
 

はぃ、おわり。

「え?式は、ないの?」

ええ、とりあえず式はありません。


水の運動も同じです。慣性の法則に従い、動いた水は、本当はいつまでも動き続けます。

でも・・・・現実は、そうはなりませんよね。
 

「その話、摩擦と どういう関係があるの?」

じゃ・・・ここに、ビー玉があります。
 

そして、見事に水平な床が延々と、あなたの目の前にあるとします。

「ちょっと、待って下さい。イメージします。・・・・おー見えてきました、みえてきましたよ〜。」
 

さぁ、ボーリングのように、ビー玉を転がして見てください。
 

「と、とりゃ〜・・・・こーろ ころころころころころ・・・・ころころ・・・・こ ころ ころ ・・・・ころ こ。」
 

止まっちゃいましたね。・・・慣性の法則って、ウソですね。
 

「ウソじゃないでしょ。

これは、ビー玉と床との摩擦で、段々遅くなって止まったんですっ。常識ですよ。」
 

そーです。正解。
 

ビー玉は、力を与えられ、転がるエネルギー(運動エネルギー)を持っていましたが、

摩擦という損失エネルギーが床との接触によって発生し、

運動エネルギーが減少し、とうとう・・・・ゼロになって死んでしまった・・・。
 

「ビー玉はもともと活きてません。ただ止まったんですっ。」
 

実は、ビー玉から運動エネルギーを奪う、もう一つの現象があるのです。
 

「へ?床だけじゃないの?なんだろう・・・・あ。」

そう。空気。空気です。
 

ビー玉は動いているけど、その周りの空気はビー玉と同じようには動いていませんでした。

というか、空気は静止していました。
 

そうすると、動いているビー玉と、空気は擦れあってしまったのです。
 

まぁ、床との摩擦の方が、ずっと影響力が大きいのでしょうけど、

もし、空気が無ければ、もちょっと、転がったでしょう。
 

「そっか・・・空気に摩擦が生じるのか・・・・

そういえば宇宙船は真っ赤になって落ちてくるっていうし。」
 

この現象は、空気の粘性という性質で生じます。

「 ね ん せ い ですか・・・・」


じゃ、今度は、で。水理学だし。
 

「水?水の摩擦ですか? あ 粘性 でしたっけ?」
 

はい。水の粘性。水のネバネバです。
 

では、この丸いバケツに水を入れて下さい。半分ぐらい。

「ハイ」
 

あーいいですねー。じゃ、この回転台の上に、バケツを置いて・・・・ちゃんと真ん中に
 

この水の入っているバケツを置いた回転台を、ゆっくりまわすと・・・・、

どうなりますか?ゆっくり、同じ速さで。
 

「そ、そりゃ中の水が回りだしますよ。くるくるくる・・・って。」
 

どうして?

「へ?台を回せば、その上においたバケツも、その中の水も動くのは、当たり前です。」

ふむ。

じゃぁ、今度は、そのゆっくり回っている回転台を、ピシっと止めましょう。

ピシッ!

どうなりますか?

「バケツは、同じようにピシッと止まりますが、中の水はまだ動いています。」

どうして?

「ど、どうしてって、だから、そんなの、あったりまえです。」
 

じゃ、時間が経つと、どうなりますか?

「中の水も静止します。」

どうして?

「もーいーょ。そんなの、あ た り ま え です。水理学なの?ホントにこれ。」
 

もちろん、見事な水理学です。水の動きですから。


バケツに水を入れて、回転台の中心に置き、ゆっくり回転させると、

バケツは回転台と一緒になって動き出しますが、

中の水はすこし遅れて動き出します。 

( お、慣性の法則ですね。 )
 

内部の水には直接、回転台からの回転力は伝わっていません。
 

バケツ自体は、回転台としっかりとくっついているため、

回転台の運動が、じかに伝わり、同時に動き出しましたね。
 

でも、液体である水は流動性があるので、スグには動き出しません。

時間が経つにつれて・・・回りだします。

「そっかー、バケツの底や側面が、水をコスったんだー」

せ い か い〜。
 

バケツの内側の面を、ものすごく拡大して考えて見ましょう。

「拡大解釈ですか?」  ちがいます。全然。
 

局所的な観察、局所的に思考してみるわけです。
 

バケツの内側にくっつくようにしていた水分子は、バケツが動くとスグに動き出しました。

そして、バケツと接触した水分子が動くと、

こんどは動いたその水分子が、動いていない隣の水分子とこすれて、それが動く・・・

それが動くと隣が動く・・・・擦れて動く・・・こすれて動く・・・・
 

こうして、擦れまくって、時間がたって、バケツの水全部が動いたわけです。
 

水は、ご存知のように、H2Oという水分子で構成されています。

その数は膨大ですね。そして、ぎゅーぎゅー密に詰まっているわけです。
 

このように、分子と分子がこすれ合って、流れが伝わるという現象が発生します。
 

これが、水の摩擦。そして、粘性 viscosity と呼ばれる性質です。

分子同士のこすれ合いで生じる粘性は分子粘性といいます。

「ほかにも粘性ってあるの?」

水の流れを塊のように考え、渦が発生すると、流れの束が擦れあう強い粘性が生じます。

これは、渦動粘性と呼ばれます。
 

もちろん、同じ流体である空気も程度は違いますが、この粘性という性質があります。
 

動いているビー玉が空気とこすれ合って、エネルギーを損失するのも

この粘性のためです。
 

さて、回転台を静止させた直後、もちろんバケツもぴたっと静止しますが、

内部の水はまだぐるぐる回っています。

これも慣性の法則ですね。
 

もし、水に粘性が無ければ、未来永劫に回転し続けてしまうはずなのですが、

そうではなく

そのうち、流れはゆっくりになって、静止します。

もちろん、これも粘性の効果。
 

静止したバケツの底や側面は、すぐそばの水分子を静止させ、

静止した水分子は、隣のまだ動いている水分子と擦れあって、運動エネルギーを奪います。
 

それが続いて起こって、いつしかバケツの水は静止していくのです・・・・。
 

「なんか・・・すんごく当たり前の現象を、

粘性と慣性を使って、科学の話にしているって感じですね。」
 

その通りです。そこから科学が始まるのですから。



【そこで一言】

粘性は・・・・空気や水の分子の擦れ合いで生じる。

→ 分子粘性 といいます。

粘性によって生じる力を粘性力 といいます。

粘性力は、分子達が全員、同じ方向に、同じ速さで動いていたら生じません。

流速の差が大きければ大きいほど・・・粘性力は大きくなります。

そして、違う流速同士の間の距離が短いほど粘性力は大きくなります。

「まぁ、狭ければ擦れあうことも多しですかね。」

そんなところです。

「はー・・・粘性ね。まぁ現象は知ってたけれどね。

粘性 viscosity っていう言葉かな。今日の話は。」


明日 第7話 

次も 粘性の話 です。

につづく。


 
Editor (oo)Tsuyoshi UMETSU Ph.D.
Associate Professor 
Maebashi IInstitute of Technoloy